1985年
WAR DANCE

1987年
DREAM RUNNER

1989年
BADLANDS

1991年
VOODOO HIGHWAY

1993年
SUN RED SUN

1998年
DUSK




レイ・ギランのセッション活動とBADLANDS

BADLANDS 1989
 '80年代はじめにニューヨークのローカル・バンドを中心に活動し
ていたレイ・ギランは、1985年に元RAINBOWのドラマー,ボビー・ロ
ンディネリのバンドへと加入し、本格的なシンガーとしてのキャリ
アを積み始めた。

 その彼が飛躍する切っ掛けになったのが、'86年のBLACK SABBATH
参加であった。グレン・ヒューズの代役として予想以上の働きを見
せた彼は、同時期のPHENOMENAプロジェクトや、ジョン・サイクスが
立ち上げたBLUE MURDERへと参加を求められる。


 そのレイにとって最も代表的なキャリアとなったのが、1989年に
結成したBADLANDSだった。元OZZY OSBOURNEのジェイク・E・リーと
タッグを組んだこのバンドは、同時期のMr. BIGやBLUE MURDERと並
び、'90年代期待のバンドと目された。しかしブルースや'70年代の
ロック・サウンドに傾倒し過ぎた音楽性は、マニアの評価は得ても
大衆的な成功には結びつかなかった。






1985年 - RONDINELLI
"WAR DANCE"

「WAR DANCE」
Studio Tracks
1. War Dance
2. Black Sheep
3. Rock & Roll
4. The One That Got Away
Live Tracks
5. Kiss And Say Goodbye
6. Fly Paper
7. We Can't Lose
8. War Dance


 元RAINBOWのドラマーであるボビー・ロンディネリが、弟のテディ・ロンディネ
リ(G)と組織したバンドの、スタジオ / ライヴカップリングの公式音源。ちなみ
にベースはジェイムズ・ロメンゾ。レイは「Rock & Roll」と「Fly Paper」以外で
ヴォーカルを担当し、それらの曲でもコーラスを取っている。録音は'85年とされ
るが、ライヴテイクの詳細な演奏日時・場所は不明。

 ライヴ音源ではレイのヴォーカルが前面に出ており、バッキングとのバランスが
あまり良くない。また音が軽く、低音の迫力が無いのは難点か。楽曲自体は典型的
なアメリカン・ハードロックで特筆すべき点には欠けるが、ウェットな「The One
That Got Away」や、ノリの良い「Kiss And Say Goodbye」は、レイの個性が際立
っている好ナンバーだ。







1987年 - PHENOMENA
"DREAM RUNNER"

「DREAM RUNNER」
1. Stop!
2. Surrender
3. Did It All for Love
4. Hearts On Fire
5. Jukebox
6. Double 6, 55, Double 4
7. No Retreat, No Surrender
8. Move - You Lose!
9. Emotion Mama
10. It Must Be Love


 元WHITESNAKEのメル・ギャレー(G)と、その弟トム・ギャレーによるプロジェ
クト第二弾。前作も優れたメロディを堪能できるウェットなプログレ・ハード路線
のアルバムだったが、この続編ではさらに多彩なゲスト陣を迎え、よりHR/HM志向
のサウンドを展開している。前作においても中心的存在だったグレン・ヒューズの
大活躍は相変わらず。本作ではさらに元ASIAのジョン ウェットンも、らしさ全開
の瑞々しい歌声で対抗している。

 レイは計4曲でメロウかつエモーショナルな歌唱を披露している。特にオープニ
ングを飾った「Stop!」は素晴らしい仕上がり。これほどの作品であるのに長らく
廃盤状態が続いていた。

 現在は「THE COMPLETEWORKS」のDisc 2として聴く事ができる。







1989年 - BADLANDS
"BADLANDS"

「BADLANDS」
1. High Wire
2. Dreams In The Dark
3. Jade's Song
4. Winter's Call
5. Dancing On The Edge
6. Streets Cry Freedom
7. Hard Driver
8. Rumblin' Train
9. Devil's Stomp
10. Seasons
11. Ball And Chain


 '88年、レイは元OZZY OSBOURNEのギタリスト,ジェイク・E・リーと意気投合し
てバンド結成に走る。他のメンバーは、レイと同時期にBLACK SABBATHを脱退した
エリック・シンガー (Dr),オジーのオーディションでは不合格だったものの、
ローカルバンドでのキャリアは豊富なグレッグ・チェイソン(B)という顔ぶれ。

 そのメンバー構成から、当然のようにヘヴィでメタリックな楽曲が予想された。
しかし出てきた音は、'70年代的なロックとブルースを基本としつつも、ジェイク
が持つアイディアを奔放に走りめぐらせた、無国籍感極まるサウンドだった。エッ
ジの強い金属的なバッキングに、レイが持ち前のパワフルかつ湿り気たっぷりのヴ
ォーカルを載せる事で、同時期のライバルバンドには無い個性を確立した。

 アグレッシヴな「High Wire」と「Hard Driver」は迫力満点。エモーショナルな
「Dreams In The Dark」はジェイク屈指の名曲とされ、楽曲の評価は高い。







1991年 - BADLANDS
"VOODOO HIGHWAY"

「VOODOO HIGHWAY」
1. The Last Time
2. Show Me The Way
3. Shin On
4. Whiskey Dust
5. Joe's Blues
6. Soul Stealer
7. Day Funk
8. Silver Horses
9. Love Don't Mean A Thing
10. Voodoo Highway
11. Fire And Rain
12. Heaven's Train
13. In A Dream


 彼らがステージで実践していた'70年代的音楽をさらに追求した2nd。全体的にジ
ェイクの自己満足的な方向性に走り、その作風は派手な前作に魅了されたファンの
失望を招く結果となった。

 しかし先頭を飾る「The Last Time」が持つパワーと大衆性は余りにも強力てあ
り、同曲こそがバンド最高の佳曲であると認めるファンは多い。

 なお「Joe's Blues」のジョーとは、当時ジェイクのギター テックをしていた元
LIZZY BORDENのギタリスト,ジョー・ホームズの事。ジョー自身も1995年にOZZY
OSBOURNE入りする事を考えると、不思議な縁ではある。







1993年 - SUN RED SUN
"SUN RED SUN"

1. Hardlife
2. Outrageous
3. Lock Me Up
4. I Know A Place
5. Responsible
6. Big Misunderstanding
7. Deadly Nightshade
8. Intoxication


1998年 - SOLO
"5th ANNIVERSARY MEMORIAL TRIBUTE"

1. Hardlife
2. Outrageous
3. Lock Me Up
4. I Know A Place
5. Chillin With Gillen
6. Hardlife #2
7. Outrageous #2
8. Lock Me Up #2
9. I Know A Place #2
10. Outrageous #3
11. Outrageous #4
12. The Final Curtain
SUN RED SUN
5th ANNIVERSARY
MEMORIAL TRIBUTE
「5TH ANNIVERSARY MEMORIAL TRIBUTE」


 「SUN RED SUN」は、'93年にレコーディングされ'95年に発表さ
れた作品。元JOEY BELLADONNAのギタリスト、アル・ロマーノのプ
ロジェクトである。

 前半4曲がレイの担当で、後半はロマーノがギター/ベース/
ヴォーカルの一人三役をこなしている(「Responsible」のみ、
ROYAL HUNTのジョン・ウェストが歌っている)。


 「5TH ANNIVERSARY MEMORIAL TRIBUTE」は、「SUN RED SUN」に
おいてレイが歌った楽曲と、そのアウトテイクを網羅したもの。

 ヘヴィなバッキングにレイのヴォーカルが走る「Hardlife」や
「I Know A Place」など、一聴に値するナンバーが揃っている。
 またリハーサル風景の断片を収めた「Chillin With Gillen」で
聞けるレイの笑い声やシャウトは、病状を感じさせないくらい明
るく力強い。







1999年 - BADLANDS
"DUSK"

1. Healer
2. Sun Red Sun
3. Tribal Moon
4. The River
5. Walking Attitude
6. The Fire Lasts Forever
7. Dog
8. Fat Cat
9. Lord Knows
10. Ride The Jack


 前作「VOODOO HIGHWAY」の失敗でバンド人気は下降。メンバー間の対立はバンド
の運営を行き詰らせ、'92年末にBADLANDSは正式に解散する。その一年後にはレイ
がこの世を去ってしまい、バンドの再結成すら実現不可能になる。しかしレイの没
後5年の節目に当たって、ジェイクとグレッグ・チェイソンが過去のテープを整理
する中で、封印された3rd用マスターテープが公式音源化される運びとなった。

 本作はバンド崩壊直前の'92年4月にレコーディングされた物で、全ての曲が一発
取りとされる(ジェイク自身「二度プレイされた曲は一つもない」と証言)。

 2ndとほぼ同じ方向性を、多少1stに近いエッジで演奏したという雰囲気の楽曲が
並び、質にもバラつきが目立つ。「とりあえず今ある曲をレコーディングした」と
いう印象が強く、目玉となるナンバーにも欠けるが、当時のジェイクとレイが残し
たサウンドは「資料」としても貴重か。