1968年
8月頃 6人編成でバンド結成 
8月24日,POLKA TULKとして
確認できる最初のライヴ
8月31日,POLKA TULK解体
4人編成となる
9月1日,バンド名がEARTHになる
9月〜11月 EARTHとしてライヴ
12月上旬 アイオミ,約2週間
JETHRO TULLに参加
12月14日,アイオミが復帰

1969年
本格的なバンド活動開始
BLACK SABBATHに改名
8月30日,ワーキントン公演にて
サバスとして初のライヴ
10月12日,1stアルバム収録
11月 フィリップス・レコードと
契約を結ぶ
11月11日,ジョン・ピールの
「トップ・ギア」に出演
11月16日,ダンフリーズ公演

1970年
1月9日,バンド最初のシングル
「Evil Woman」を発表
2月13日,「BLACK SABBATH」発表
4月26日,ジョン・ピールの
「サンデーショウ」に出演
4月29日,ローザンヌ公演
5月22日,オランダのテレビ番組
「DOEBIDOE」に出演
5月25日,西ドイツのテレビ番組
「Beat-Club」に出演(一回目)
6月16日〜21日,2ndアルバム
「PARANOID」をレコーディング
6月26日,ベルリン公演
7月17日,シングル「PARANOID」を発表。スマッシュヒットに
8月31日,モントルー公演




バンド結成から『BLACK SABBATH』 発表まで (1968〜70年)
 オジーの自伝によれば、BLACK SABBATHそもそもの起こりは、ジョン・マイケル・オズボーン(オジ
ー)が、クラブの店内掲示板に"Ozzy Zig Needs Gig"と広告を貼り出した事が切っ掛けだった(オジー
は自前のPAを持っていたそうで、バーミンガムのローカル・バンドからは目を付けられていた様だ)。

 これに応じたテレンス・バトラー(ギーザー)がオジーに声を掛け、彼らは'68年の春にはRARE BLEED
のメンバーとして行動を共にする事となった。

 その後RARE BLEEDが行き詰った頃、同じくバンド活動が頓挫したMYTHOLOGYのフランシス・アントニ
ー・アイオミ(トニー)と、ウィリアム・トーマス・ワード(ビル)も、依然としてクラブに出ていた
広告を見てオジーを訪ね、オリジナル・サバスのメンバー四人が集う事となった。

 彼らはさらにスライド・ギターが出来るジミー・フィリップスや、サックス奏者のアラン・クラーク
を加えた六人編成でPOLKA TULK BLUES BANDとして活動を開始し、ブルースやジャズ寄りの音楽をプレイ
したが、ジミーとアランはアイオミの意向で結局脱退(この時点からアイオミがリーダーシップを執っ
ていた事が判る)。元の四人に戻った彼らはビルの発案でバンド名をEARTHとして再スタートする。

 彼らのライヴは次第に評判となり、特に評価されたアイオミは'68年12月初旬にJETHRO TULLへ引き抜
かれるが、他人に雇われる形式に納得が行かなかったトニーは12月中旬にEARTHへ復帰。1969年1月か
ら、バンドの活動は本格的なものとなっていく。


 アイオミがバンドに戻った直後のリハーサルでは「Black Sabbath」と「Wicked World」のリフが生み
出され、同時期に「The Wizard」も書かれた。これら不気味な曲想を持つ個性的な楽曲を引っさげ、彼
らはイギリスだけでなくドイツやデンマークなどヨーロッパでもツアーを行い始める。彼らは、自身も
ミュージシャンでクラブを運営するジム・シンプソンをマネージャーとして、'69年8月から10月ごろに
かけてデモを製作。ノーマン・ヘインズのカヴァー曲「The Rebel」や「When I Came Down」を録音した
ほか、「Song For Jim」といったナンバーも手掛けた。

 やがて名前が売れてくると、今度はありがちなEARTHというバンド名が彼らの音楽との間にイメージの
齟齬をきたす様になった。そこで彼らはギーザー発案の曲名にちなんで"BLACK SABBATH"に改名したので
ある(アイオミの自伝によれば、新たなバンド名の使用は1969年8月30日から)。


 こうした紆余曲折の末、彼らは'69年10月12日にロンドンのリージェント・サウンド・スタジオにおい
て"観客のいない状態でライヴ一回分の演奏"をしてレコーディングを行った。作業そのものは一日か二
日程度だが、アルバムにはバンドの本格的始動から丸一年間に及ぶライヴ活動と様々な経験、そして野
心が詰まっていた。同じ頃にバンドはフィリップス・レコードとの間に契約を獲得し、本格的なメジャ
ー・デビューを迎える事となる(アルバムはフィリップスが新たに興したレーベルである、ヴァーティ
ゴ・レコードよりリリースされる)。

 そして年が明けた1970年2月13日デビュー・アルバム「BLACK SABBATH」が発表された。
 この「13日の金曜日」より、ヘヴィ・ロックの新たな歴史が始まった。



初期ライヴと『BLACK SABBATH』 Tour (1969〜70年)
 バンド名を"BLACK SABBATH"に改めた'69年9月頃から「BLACK SABBATH」リリース後のツアーが一段落
する'70年8月末までの約一年間、彼らは毎日のようにギグを繰り返し、100公演を越えるショウを行って
いる。それらの中からはオジーのベストアルバム「THE OZZMAN COMETH」に収録された'70年4月26日の
BBC"John Peel's Sessions"や、"Beat Club"で知られる'70年5月25日・ブレーメンでのスタジオライヴ
映像など公式化されたテイクもある。

 とは言え今からおよそ半世紀も過去のこと。当時のライヴをフルセットで収録した音源は非常に限ら
れている。かつては'70年6月26日のベルリンでのライヴを収めたタイトルだけが(年代や日付などクレ
ジットを誤ったものが多いとはいえ)当時のライヴを伝えていた。


 しかし今では発掘も進み、下記の音源でサバス結成当初のライヴを確認できるようになった。




1968年7月13日 シロス "クイーンズ・ホテル"
Live at Queens Hotel, Silloth, UK 13th July, 1968
(AUD)

Silloth 1968
(Non Rabel : 1CD-R)

End Of Pre-Sabbath
(LAF-1289 : 1CD-R)
1. Steppin' Out
2. Top Of The Hill
3. All Your Love
4. Help Me
5. Dust My Broom
6. All That Jazz
7. Room With A View
8. Morning Dew
9. Spoonful

Earth 1969 Demos
10. The Rebel 
11. When I Came Down 
12. Thomas James 
13. Early One Morning Blues
 まず最初に、サバスそのものの音源ではないが、マニアならばぜひ聴いておきたい歴史的な一本を取り上げておこ
う。本音源はアイオミとビルがオジーらと合流する以前に参加していたMYTHOLOGY (ミソロジー/マイソロジー)
のもので、'68年7月13日のシロス"クィーンズ・ホテル"でのライヴを収めている。MYTHOLOGYは'68年当時にローカ
ル・バンドとしてそれなりに知られた存在だったと言うが、大麻所持によりメンバーが逮捕された事で活動が行き詰
まり、このシロスでのライヴが最後になったという。彼らのライヴは現時点でもこのシロスのものしか確認されてお
らず、今後も発掘があるとは考え難いので、まさに唯一無二の音源だ。

 半世紀も昔の録音ながら思いのほか明度がある音像で、演奏も近く、迫力があるサウンド。演奏はブルースのスタ
ンダードや当時のヒット曲のカバーを中心としているが、アイオミが彼以外の何者でもないギター・トーンで重く引
きずるようにリフを刻む「All Your Love」や「Spoonful」は、すでに貫禄のようなものを感じる。14分を越える
「Help Me」でのソロは大きな聴き所。「Dust My Broom」や「Morning Dew」でのビルのプレイも要注意だ。「All
That Jazz」はその名の通りジャジーなサウンドで、後のサバスでも確認できるようなギター・プレイをすでにここ
で披露している。




1969年11月19日 スコットランド,ダンフリーズ
Live at Rugman's Youth Club, Dumfries, Scotland, UK 16th November 1969
(AUD)

Dumfries 1969
(Zodiac 144 : 1CD)

Early Warning
(LAF-2187 : 1CD-R)
1. Black Sabbath
2. Let Me Love You Baby
3. Song For Jim
4. The Warning
5. Wicked World
6. Behind The Wall Of Sleep
7. Early Morning School
  (Early One Morning Blues)
8. N.I.B.
9. Blue Blooded Man
 現時点で確認ができる、サバスとして最古のライヴ・ソース。2015年に突如として音源が公開され、直後からアイ
テム化が相次いだ。'69年当時のライヴ音源が存在する事は以前からマニア間で知られ、この日の録音とされる
「Early One Morning」が(前述したMYTHOLOGY音源のボーナスのように)登場していたものの、ライヴの全体や具体
像は明確でなかった。そのため本音源の登場はセンセーショナルであった。公開された情報によれば、録音者はアレ
ックス・ウィルソンという人物で、63分間のオープンリール・マスター。録音は「Black Sabbath」から始まるが、
同曲は前半パートが欠落していたため、これがライヴの全曲か否かは不明である。しかし当時のライヴがおよそ一時
間、録音状態に加えマスターの保存状態も良好な状態で確認できるのは、奇跡的と言って良い。

 初期バージョンの「Black Sabbath」と「N.I.B.」ほか、アイオミがギターを弾かずフルートを吹く「Song For
Jim」が印象深いが、その他にも「Let Me Love You Baby」や前述の「Early One Morning」といったカヴァー曲が、
まだ少ないオリジナル曲を補う形でふんだんに盛り込まれ、バンドの音楽的ルーツを明らかにする。さらに長大な
「The Warning」に代表されるフリー・ジャムの要素は、1stアルバムにそのまま持ち込まれているのが判る。

 プレスCDの価値もある『Dumfries 1969』が定番だが、CD-R盤の『Early Warning』も内容は同じである。




1970年4月26日 "ジョン・ピールズ・セッション"
Live at John Peel Sessions, BBC Broadcasting House, London, UK 26th April 1970
(FM-SBD)

Walpurgis
(Shadow Records : 1LP)

The Ozzman Cometh
(Official : 2CD)
1. Fairies Wear Boots

2. Behind The Wall Of Sleep

3. Walpurgis (War Pigs)

4. Black Sabbath
 イギリスで1stアルバムがリリースされた二か月後、サバスがBBCのラジオ番組「ジョン・ピールズ・サンデー
ショウ」に出演した際の音源。彼らは同時期、これ以前にも幾つかのメディア出演を行ったが、多くの素材が失われ
たか、未だに発掘されていない(サバスは'69年11月11日にもジョン・ピールの番組「トップ・ギア」に出演し、4
曲を演奏しているが、これとは別物。その際の音源は残っていない模様)。現時点において、ここで聴ける音源がバ
ンド史上でも最古のサウンドボード・ライヴ素材と考えられる。

 後年『PARANOID』へ収録される楽曲が、初期バージョンの形で早くもライヴ演奏されている。バンドの代表曲と
なる「War Pigs」は、この当時まだ「Walpurgis」というタイトルで、歌詞は魔女の黒ミサや超自然的な現象を題材
とした内容。「Black Sabbath」も当時はライヴ演奏において構成がアルバムと異なり、演奏の緩急がより強調され
ている。

 1997年にリリースされたオジーのベストアルバム『THE OZZMAN COMETH』において、これらのテイクは「Ozzy's
Basement Tape」という扱いで収録されていた。初回盤ではボーナスCDを含めることで4曲全てを楽しめたが、現行
の1CD盤では「Black Sabbath」と「War Pigs」の2曲のみ収録されている。




1970年4月29日 スイス,ローザンヌ
Live at Electric Circus, Lausanne, Switzerland, 29th April 1970
(AUD)

Live In Lausanne April 1970
(Dead Man Records : 1LP)

Lausanne 1970
(LAF-2238 : 1CD-R)
1. Introduction
2. Behind The Wall Of Sleep
3. War Pigs
4. Fairies Wear Boots
5. The Blue Coast Man
6. N.I.B.
7. Black Sabbath
 2015年から2016年にかけて、サバスのライヴ・ソースでは大きな発掘が相次いだ。このスイス,ローザンヌ公演も
そのひとつ。本ライヴも後述するモントルー公演同様、突如として音源が現れ、その付属情報で初めてライヴ日程の
存在が確認された。

 いかにもテープ録音といった質感を湛えつつも、録音状態はかなり優良。音のダイレクト感やバランス、そして分
離感も、同時期の客席録音ものでは頭一つ抜けている(・・・・・・というか、ヘタなラジオ音源より良い)。バンド紹介
に続く「Behind The Wall Of Sleep」がオープニングだった事は確かだろうが、ここで聴ける6曲が当日の全てなの
かは不明。多くで曲間が途切れているので、曲順がアイテム通りで正しいのかも不明ではある。しかしドス黒い火を
噴くようなバンドの演奏が、ヴィンテージな味わいたっぷりのサウンドで聴ける喜びに勝るものは無い。「The
Blue Coat Man」で楽しめるフリー・ジャムの要素とスリルはクセになる。初期サバスの凄みほとばしる46分間だ。

 なお、ジョン・ピール・セッションと同じく、ここでも「War Pigs」は歌詞違い。「Black Sabbath」は構成違い
である。


 Lost And Foundレーベルの『Lausannne 1970』には、6月21日,ドイツ・フランクフルト公演とされる「War
Pigs」と「Iron Man」、さらに12月12日,デンマーク・コペンハーゲン公演とされる「Wicked World」がボーナス収
録されている。




1970年5月25日 西ドイツ,ブレーメン "Beat-Club"
Live at Radio Bremen Studios, Bremen, West Germany, 25th May 1970
(Pro-Shot)

Black Mass
(Video CD)

Musik Laden Live
(DVD)
1. Black Sabbath

2. Blue Suede Shoes
 1970年当時のサバスを最も手軽に、かつ優れた状態で楽しめる、以前からの大定番。内容的には上に掲げた2種類
とも、「Paranoid」と「Iron Man」も含まれているのだが、そちらは『PARANOID』が発表された後の、1970年9月
26日(場所は同じブレーメンのスタジオ)出演テイク。

 マイム演奏がメインであるイギリス・BBCの「トップ・オブ・ザ・ポップス」と異なり、この「ビートクラブ」
はライヴ演奏を放送するのが大きな特徴。それでも「Black Sabbath」の冒頭では、雷雨と鐘の音の効果音を配し
て、アルバムに準拠した構成を取っている(とは言え、ラストは一節カットしている)。画面効果やレイヤーを重ね
たような画作りも含め、サイケで不気味なムードを醸す。

 カバーの「Blue Suede Shoes」は、のちの「Paranoid」のように勢い良くアタックの強い演奏。同曲を取り上げた
のは面白半分だったようだが、手短でノリが良く、穴埋めになるような曲をプレイしていた事が、およそ一か月後の
「Paranoid」誕生に結びついたのかも知れない。なお、サバスがライヴでカバー曲を取り上げる事は、これ以降ほと
んど無くなる(その例外がイアン・ギランとの「Smoke On The Water」なのだが)。




1970年6月26日 西ドイツ,ベルリン
Live at Audimax, Berlin, Germany 26th June 1970
(SBD? / AUD)
 『BLACK SABBATH』発表当時、1970年のライヴ・ソースといえば、かつてはドイツ・ベルリンにおける、一説で
はテレビで放送したと言われるライヴ音源が大定番であった。とりわけ『LIVE AT PLUNGPTON』に代表されるアナ
ログ・ブートが有名で、コレクターズ・アイテムがCD化されて以降も『RETURN TO 1969』(Elements Of Crime-
010)など各種のアイテムを生み出してきた。近年出回っているアイテムも、この『LIVE AT PLUNGPTON』系統が主
流である点に変わりはない。しかし同じアナログ起こしても、リマスター技術の向上に加え、使用するアナログLPに
盤質良好な素材を用いるなど、聴き易さでは明らかに既発を上回っている。

 後述するスイス・モントルー公演サウンドボード音源が登場して以降、本ベルリン公演はいささか印象が弱まって
いたのだが、本ライヴを長編で収録したとされる別音源の登場によって、その存在感を取り戻している。


 なお、ここで演奏されている「Paranoid」や「Iron Man」・「War Pigs」は歌詞違い。しかしバンドはこのライヴ
直前の6月16日から21日にかけてアルバム『PARANOID』をレコーディングしているので、すでに楽曲は現行の形で
存在していたはず。なのに初期バージョンで演奏されているのは釈然としない(さらに言えば2ヵ月後のモントルー
公演でも「Iron Man」や「War Pigs」が初期バージョンだった)。単にオジーが歌いなれた歌詞で歌ってしまった、
とも思えるが、『PARANOID』デラックスエディションには一部の曲に歌詞違いテイクも含まれているので、バンド
が「どちらの歌詞を本採用するか」判断に迷っていた、または「アルバム発表までは旧バージョンで演奏する」とい
う考えがあった可能性も無くはない。実際にシングル発表後のモントルー公演では、「Paranoid」が我々の知るスタ
ジオテイクに準拠していた。この辺の真相解明は今後の検証課題だろう。



SBD音源?

Berlin 1970
(Non Rabel : 1CD)
 現時点における'70年ベルリン音源で、最優良盤と思われる一枚。2013年秋
にリリースされた本作も、テレビ放送されたと言われる伝統の『LIVE AT
PLUNGPTON』
系統。このアイテムが登場する少し前から、『DEFINITIVE
VINYLS』
(LAF-1324/1325)や、ショップのCD-Rプレゼント・アイテム

『BERLIN 1970』(Non Label)が、良質な盤起こしを謳ってリリースさ
れ、従来より優れた明度で演奏を楽しませてくれた。本作も上記既発と同種
類の音源であるから、音の特性や収録内容において劇的な差異は無い。しか
し使用素材の状態や高い技術水準でのデジタル化により(同一系統の音源と
しては、だが)、迫力あるサウンドと明瞭な輪郭で演奏を聴けるようになっ
ている。


 過去の『RETURN TO 1969』で目立ったヒスノイズやスクラッチ・ノイズ
は気にならないし、全編で高域がノイジーだった『DEFINITIVE VINYLS』

よりも遥かに聴き易い。なにより豊かで自然な低音が素晴らしい。荒々しく
もエネルギッシュな極初期サバスのプレイを、良好なバランスやヴィンテー
ジ感たっぷりの音色で楽しめるのは嬉しい。

 クリアネスや聴き易さという点では、公式にも採用された同年モントルー
音源に及ばず、クリアなサウンドを期待すると落胆するだろう。しかし演奏
に渦巻いているエネルギーや、音から発散されるアングラなムードは本作な
らでは。底知れない不気味さを湛えた初期サバス・ライヴの真髄を捉えたよ
うなサウンドだ。


 ラストで2トラック収められた「Radio Ad」は、当時のラジオ・コマーシ
ャルとされる、それぞれ約30秒間のテイク。

 スタジオ・バージョンの「Black Sabbath」をバックにナレーションが淡々
と被る内容そのものは「面白みに欠ける」と感じる人も多いだろうが、当時
の貴重なテイクを、非常に優れた状態で発掘したという点では歴史的であ
る。
1. Introduction
2. Paranoid
3. Iron Man
4. Black Sabbath
5. War Pigs
6. Hand Of Doom
7. Rat Salad
8. N.I.B.
9. Radio Ad #1
10. Radio Ad #2


AUD録音

Lost Berlin Tape
(Non Rabel : 1CD-R)
 上記したプレス盤『BERLIN 1970』が2013年秋にリリースされた際、ショッ
プのボーナスとして付属したCD-Rアイテム。

こちらは本編と同じ'70年6月26日のベルリン公演を、初登場とされるオーディエンス録音で収めている。

 これまで『LIVE AT PLUMPTOM』系統のテイクしか知られていなかった本
ベルリン公演を、既発と全く異なるマスターで収録し、これまで聴けなかっ
た同日の「Fairies Wear Boots」と「Wicked World」まで楽しめる。プレス
CDに収録されたラジオ・コマーシャルも驚かされたが、この音源はそれ以上
に衝撃的だった。


 音質的にはプレスの『BERLIN 1970』と比べ、全編でヒスノイズが目立つ
ほか、部分的な劣化も目立つなど、テープのゼネレーションはあまり上位で
は無いようだ。しかし演奏には充分以上のダイレクト感があり、メンバー4
人それぞれのプレイもしっかり聴き取れるなど、同時期の客席録音としては
優良な素材である。

 曲順も『LIVE AT PLUMPTOM』系統と異なり、3曲目に「N.I.B.」が登場
する点や、「Black Sabbath」冒頭などで確認出来るオジーのMCも、従来のベ
ルリン音源を聴き込んできたファンには驚きだろう。


 初登場2テイクのうち「Fairies Wear Boots」は海外メタル・サイトが音
源を動画投稿サイトにアップした事があった。しかしそちらはテープスピー
ドが異様に早く、劣化も大きかった。まともな状態で聴ける今回のテイクと
は比較以前の問題だ。さらにラストの「Wicked World」も、アイオミの長大
なロングソロが無い7分弱の"シングル準拠"バージョンと、非常に珍しい。

 アイテムとしての扱いはボーナスであったが、内容のレアさ貴重さはプレ
ス盤の『BERLIN 1970』に優るとも劣らない。モントルーでのSBD音源と並
び、1stアルバム当時のサバス・ライヴでは必聴の一本だ。
1. Paranoid
2. Iron Man
3. N.I.B.
4. Black Sabbath
5. War Pigs
6. Hand Of Doom
7. Rat Salad
8. Fairies Wear Boots
9. Wicked World




1970年8月31日 スイス,モントルー
Live at Montreux Casino, Montreux, Switzerland 31st August 1970
(SBD)

Paranoid: Super Deluxe Edition (4CD) / Disc-3

Box Set 外装

CD-3
"Montreux 1970"
1. Intro.

2. Paranoid

3. N.I.B.

4. Behind The Wall Of Sleep

5. Iron Man

6. War Pigs

7. Fairies Wear Boots

8. Hand Of Doom
 1970年の『BLACK SABBATH』ツアーは、8月31日のスイス・モントルー公演をもって最終日とされている。しか
しその日付および公演地,会場名が明らかになったのは2010年末。それも音源が発掘されての事だった。

 2010年当時、マニア間で知られていた'70年ライヴ・ソースのうち、ライヴを長編かつ「ある程度」のクオリティ
で収録していたアイテムと言えば、上記したベルリン公演がほとんど唯一であった。その他には断片的なオーディエ
ンス録音が確認されていたのみであり、まともなタイトルすら無かった。そのような状況下、フルスケールのライヴ
が登場したのである。しかも内容は文字通り公式級のステレオ・サウンドボード。何から何まで異例づくめの登場
は、サバス・マニアにとって革命的な出来事であった。

 本ライヴ・ソースは2010年の登場直後から、ファンの間で公式化が切望されてきた。それが実現したのは2016年11
月、『PARANOID』の4枚組スーパーデラックス・エディションの発売によってであった。


 一説にライヴ・アルバムの製作を前提として公式レコーディングされたというサウンドは、音の実存感や明瞭なエ
ッジ、きちんとミックスされた分離感など言う事なし。それがオープニング・イントロと「Paranoid」から、抜群の
クリアネスで再現されている。ギーザーのベースが唸りを上げるような「N.I.B.」は前半の聴き所。この曲とアルバ
ムでは位置が前後する「Behind The Wall Of Sleep」も興味深い。なおこの時点でも「Iron Man」と「War Pigs」は
歌詞違いの初期バージョン。オジーの特徴的なヴォーカルもこの当時は独特なパワーと張りがあって、'80年代のソ
ロ以降でしか彼の歌声を知らない人には意外の感すらあるだろう。ギーザーのベースノートがアイオミのヘヴィなギ
ターと強烈な主張をし合う「Fairies Wear Boots」はライヴのクライマックス。演奏後の大盛り上がりなオーディエ
ンスのリアクションも堪らない。その声に引っ張り出されるようにアンコール演奏された「Hand Of Doom」は最高。
不気味な静けさと狂気のようなアタックが情緒不安定に出入りを繰り返す曲想は「これぞ初期サバス!」としか言い
様が無い。「Rat Salad」で動的に締めるラストもライヴ映えしている。

 本音源はDEEP PURPLEの『LIVE IN STOCKHOLM 1970』などと並び賞されて然るべき、1970年ハードロック・ライ
ヴの決定的音源である。


 なお、このモントルー公演では「N.I.B.」とされるプロショット・フッテージの存在が、ごく短い時間ではある
が、明らかになっている。同時期のライヴ映像としては、8月21日,ベルギーにおけるビルゼン・ポップ・フェステ
ィバル(Bilzen Pop Festival)の「Paranoid」も公開されている。さらなる発掘が期待される。



Discovery Of Madness
(BON-353 : 1CD)

Definitive Montreux 1970
(Zodiac-116 : 1CD)

Fire In The Sky
(Non Rabel : 1LP)
1. Intro.
2. Paranoid
3. N.I.B.
4. Behind The Wall Of Sleep
5. Iron Man
6. War Pigs
7. Fairies Wear Boots
8. Hand Of Doom / Rat Salad

Demos 1969
9. The Rebel
10. When I Came Down
1. Intro.
2. Paranoid
3. N.I.B.
4. Behind The Wall Of Sleep
5. Iron Man
6. War Pigs
7. Fairies Wear Boots
8. Hand Of Doom
A1. Paranoid
A2. N.I.B.
A3. Behind The Wall Of Sleep
A4. War Pigs

B1. Iron Man
B2. Fairies Wear Boots
B3. Hand Of Doom / Rat Salad
 '70年モントルー公演は、まずコレクターズ・アイテムとして登場し、ファンに大きな驚きを与えた。オフィシャ
ルに採用された2016年まで、新たな大定番音源として多種多様なタイトルを生み出した。しかし公式が部数限定で高
価なボックス・セットの一枚である以上、多くのファンが同ライヴに接するという意味では、これらのアイテムには
まだ大きな存在価値があると認められる。


 『DISCOVERY OF MADNESS』は、各種タイトル中もっとも早く、2010年末に登場したアイテム。Bondageレーベル
のアイテムらしく音に迫力を持たせエッジの効いた音像。ラストに'69年のデモ「The Rabel」と「When I Came
Down」を収めている。この2曲をプレス盤でコレクションできるのはポイント。


 2011年の年明け直後に登場した『MONTREUX 1970』は、イコライジングが控えめで、生々しいナチュラルなサウ
ンドが特徴。特にギーザーのベースノートがファットな音色で豊かに描かれ、当時のサバス・ライヴらしいドゥーミ
ーなムードを再現する。同アイテムはジャケット違いで再リリースされたのち、2015年には上記した『DEFINITIVE
MONTREUX 1970』
として新装された。こちらは音がより整理された、公式感覚のあるマスタリングとなった。現状
はこのアイテムが入手しやすい。


 アイテムとしては後発となる『FIRE IN THE SKY』は、2013年にヨーロッパで登場したアイテム。前述した同年
ローザンヌ公演同様、近年再び増えているアナログLPブートである。なお、こちらでは収録時間調整の都合からか
「Iron Man」と「War Pigs」の曲順が入れ替えられている。


 ここで掲載した三種類のアイテムは、ご覧の通り全て同じ宣材写真をもとにアートワークされている。このグルー
プ・ショットが、当時のサバスらしさを捉えた一枚、という事だろうか?