1971年
7月1日 or 2日,
北米より再びツアーに突入
7月18日,トロント公演
"Beggar's Banquet Dance"フェス
7月21日,3rdアルバム
『MASTERS OF REALITY』発表
8月31日,マイアミ公演にて
北米ツアー1stレグ終了
9月4日,シュパイヤー公演
"British Rock Meeting"フェス
9月5日,ウィーン公演
"48 Hours Festival"出演
9月10日,シラキュース公演
北米ツアー2ndレグ始まる
10月1日,サンフランシスコ
Winterland Ballroom公演
10月28日,ロチェスター公演
71年ツアーはこの日で終了
11月16日より一か月間
メンバーの病気により
英国及び欧州ツアーキャンセル

1972年
1月24日,イギリスツアー開始
25日までバーミンガム公演
2月24日,ブラフォード公演
イギリスツアー終了
3月1日,アーカンソー州より
北米ツアー3rdレグ始まる
3月10日,サンフランシスコ
Winterland Arena公演初日
3月11日,サンフランシスコ
Winterland Arena公演2日目
3月17日,カリフォルニア州
サンバーナディーノ公演
4月2日,パセーイク公演
3rdアルバムに伴うツアー終了
6月,『Vol.4』製作セッション
9月25日,『Vol.4』リリース




『MASTER OF REALITY』 発表まで (1971年4月から7月)
 『PARANOID』発表後のツアーでは、アメリカそしてヨーロッパと過密なライヴ日程を組まれながら
も、勢いあるバンドは新たな楽曲をツアー中に生み出していた。'71年1月のライヴでは早くも「After
Forever」や「Into The Void」といった曲のプロトタイプがステージで演奏されている。

 それら"ツアーで生まれ、ステージで育まれた"楽曲を携えたサバスは、'71年2月5日からノッティン
グ・ヒルの"アイランド・スタジオ"に入り、3rdアルバム『MASTER OF REALITY』の製作に突入する。

 現在リリースされている『MASTER OF REALITY』デラックス・エディションでは、おなじみの楽曲
でも歌詞やメロディだけでなく、テンポも異なるアウトテイクが含まれており、メンバーがスタジオで
様々な可能性を試した事が伺える。スタジオ入りする前に曲を練り上げ、基本的にライヴのムードでレ
コーディングしていた前2作品とはこの点が大きく違い、1stや2ndの成功で得られた余裕がここにも反
映されている。アメリカで染み付いたドラッグの悪癖を歌った「Sweet Leaf」イントロの咳払い、
「After Forever」でのシンセサイザーは印象深いが、「Lord Of This World」アウトテイクではピアノ
やスライド・ギターもフィーチャーしていて、楽曲をさらに作り込もうとしていたのが判る。


 このアルバムはこれら楽曲の充実ぶりだけでなく、ヘヴィネスとドゥームの極地といえるサウンドが
特にファンの支持を受けている。その要因のひとつとしてレギュラーから一音半も下げられたアイオミ
のギター・チューニングが挙げられる。これはアイオミが(かつて工員時代に負傷した)右手の指への
負担を押さえると同時に、弦のテンションを緩めて弾き易くしようとした事から始まったという。演奏
し易くなると同時に音も個性的になるとあって、バンドは当時ライヴでもこの手法を試そうとしたが、
チューニングを下げ続けていったら最後は何を演奏しているか判らなくなったため、結局戻していった
というエピソードも残っている。

 彼らはアルバムの作業等で約十日間を費やし、'71年2月17日から4月2日にかけて二度目のアメリカ
ツアーを実施する。アルバムの作業が全て完了したのは、アメリカツアー終了後の4月5日であった




『MASTER OF REALITY』Tour (1971年7月1日 〜 '72年4月2日)
 '71年4月26日に『PARANOID』ツアーの全日程を終えたサバスは、約二ヶ月のインターバルを挟んだ
後、『MASTER OF REALITY』発表に先行し、7月2日のオハイオ州クリーヴランド公演よりツアーを
スタートさせる。この三度目の北米ツアーから始まった『MASTER OF REALITY』ツアーも、前2作品
の時と同じくおよそ100公演というハードなもの。

 当時の音楽評論家からはバッシングされたが、アメリカにおけるサバス人気はすでに凄まじく、ライ
ヴは満員が当たり前。7月21日にリリースされたアルバムも飛ぶような売れ行きを見せた。アメリカで

『BLACK SABBATH』・『PARANOID』がゴールドディスクを獲得したのは'71年5月から6月にかけて
だが、『MASTER OF REALITY』は9月にはゴールド獲得に至っている。ビルボードでも8位まで上昇
し(イギリスでは5位)、大西洋の両岸でモンスター・バンドとしての存在感を見せ付けたのである。


 初期のピークというだけあってライヴで繰り広げられた演奏は壮絶の一語に尽きる。しかし今なお
『MASTER OF REALITY』でのライヴはサウンドボード音源が確認されておらず、当時のライヴ演奏を
聴くにはオーディエンス録音に頼るほか無い。その中でセットリストに見るべき点があるカナダ・トロ
ント公演と、サウンドの迫力と音質に秀でたサンフランシスコ公演のテイクは、このツアーにおけるラ
イヴ音源の決定版というにふさわしい。




1971年7月18日:カナダ・トロント公演 (AUD)
Live At Borough Of York Stadium, Tronto, Canada 18th July 1971

Beggars Banquet Dance 1971
(Zodiac-316:1CD)

Master Of Toronto
(Non Rabel : 1CDR)

Wicked Sabbath
(ZA66 : 1CD)
1. N.I.B. / 2. War Pigs / 3. Sweet Leaf / 4. Black Sabbath / 5. Iron Man
6. Children Of The Grave / 7. Wicked World (Incl. Guiar Solo & Jam)
8. Paranoid / 9. Fairies Wear Boots

 ツアー開始後9公演目のカナダ・トロント公演を収めたオーディエンス録音。
 同時期のソースではプレスCD化された『MASTER OF WINTERLAND』(REEL MASTER-004)も大変良好な音質を持っ
ているが、そちらはカットが散見される不完全版であるため、(曲間カットはあるにせよ)演奏を全て把握できるこ
ちらを、本稿ではより重視する。

 本音源はサバスが"Beggar's Banquet Dance Festival"というフェスティバルに出演した際の模様(他にはTHREE
DOG NIGHTやHUMBLE PIEらが出演していたという)。今から40年以上も昔の素材ながら、音の均整や分離、ダイレク
ト感や明度などはかなり優れている。演奏中に観客の声が邪魔にならないのも特徴で、少し聴いた程度ではラジオ音
源のような印象すら与える音像だ。アイオミとギーザーのリフがヘヴィ&ドゥーミーな音色を轟かせ、ビルのドラム
が衝動的なプレイで聴き手を圧倒する「War Pigs」と「Sweet Leaf」は凄まじいし、16分を越える「Wicked World」
もカットなしで聴ける。この直後(バンドの代名詞なのに)セット落ちしてしまう「Black Sabbath」が聴けるのは
嬉しい。

 後にオジーがメドレー化する「Iron Man」と「Children Of The Grave」が続けて演奏されたのも、今の所この日
が最も初期となる。オジーは本ライヴで聴ける「Wicked World」以外の楽曲を、ソロ転向後も近年に至るまで度々取
り上げている事から、彼にとっての「サバスらしさ」はこの辺りで形成された事が判る。この時期のセットリストは
オジーのソロやその後のサバス・ライヴを通じて現代にまで名残りを留める、特別な時代なのだ。





1971年9月25日:カリフォルニア州ロングビーチ公演(AUD)
Live at Long Beach Arena, Long Beach, CA, USA 25th September 1971

Long Beach Arena 1971
(Zodiac-432 : 1CD)
 上記トロント公演から約2ヶ月後。サバスはアメリカ西海岸でも屈指の会
場でギグを披露するに至った。


 同年2月のロサンゼルス公演『L.A. FORUM 1971』と同じ、ロバート・
リッチという人物が録音したマスターから音盤化したものという。

 会場のホールトーンを含む音像ながら、演奏そのものは充分に聴き取れ
る。大会場での盛り上がりを生々しく体感させる客席ドキュメントだ。

 基本的にはトロント公演に準じるセットだが、この時点で「Black
Sabbath」がセット落ちしているのが印象的。曲目だけなら代表曲ばかりで意
外さのかけらもないのだが、衝動的な演奏とファンが煽り立てる熱気は、初
期オリジナル・サバスの凄みに溢れる。

 アメリカでツアーを行うようになっておよそ一年。場数を踏んだバンドは
「Wicked World」のジャムでも呼吸をピッタリと合わせる。ギターソロを含
む長大な構成でも緊張感と程よい安定感が聴く者を飽きさせない。


 同時期の録音は前述トロントか、後述するサンフランシスコが定番であっ
たが、それらに勝るとも劣らない、素晴らしい素材だ。

1. Intro / 2. N.I.B. / 3. War Pigs / 4. Sweet Leaf / 5. Iron Man
6. Embryo / Children Of The Grave / 7. Wicked World
8. Guitar Solo Incl. Orchid / Jam / 9. Wicked World (Reprise)
10. Paranoid / 11. Fairies Wear Boots




1971年10月1日:カリフォルニア州サンフランシスコ公演(AUD)
Live at Winterland Ballroom, San Francisco, USA 1st October 1971

Master Of Winterland
(Reel Masters-004 : 1CD)
 ツアー開始からおよそ2ヵ月半が経過した10月1日、サンフランシスコの"
ウィンターランド・ボールルーム"で行われたショウを収録したソース。

『MASTER OF REALITY』ツアーにおけるオーディエンス録音は数あれど、
サウンドの明度や演奏の近さなど、恐らく最も録音状態に優れたものがこれ
だろう。

 無双の音圧に裏付けられたダイナミックなライヴ・サウンドは、ちょっと
上品過ぎるきらいもあった『MONTREUX 1970』以上に"生"のサバスを味わわ
せてくれる。発掘当時に世界中のサバス・マニアが驚愕した音源だ。

 '71年4月にサバスが来日公演を計画していたのはすでに記した。その来日
は未遂に終わったが、サバスのジャパンツアーは引き続き模索されていた。
本音源はその資料用としてバンドの許可を得て録音された素材を、レコード
会社の日本人関係者がオープンリールテープにコピーしたものが元になって
いるという。その出自を考えれば音の明度と凄さも納得だ。


 音のダイレクト感は他の同時期録音が及ばないほど素晴らしく、オジーの
ハイテンションな掛け声一発からヘヴィリフが轟く「War Pigs」や、イント
ロにおけるビルのドラムが強烈な「Iron Man」、会場が揺れそうな重低音が
炸裂する「Children Of The Grave」など、全てとんでもない大迫力だ。マス
ター・テープの都合から「Wicked World」のイントロ部分と「Paranoid」の
大半が失われているのが残念だが、プレスCDとしてのアイテム性も高い。

上記トロント公演の録音と共にサバス・ファン絶対の必携音源だ。
1. Intro. / 2. N.I.B.  / 3. War Pigs  / 4. Sweet Leaf  / 5. Iron Man
6. Wicked World  / 7. Guitar Solo / 8. Wicked World(Reprise) / 9. Embryo
10. Children Of The Grave  / 11. (Cut In)Paranoid  / 12. Fairies Wear Boots




1971年10月17日:アリゾナ州フェニックス公演(AUD)
Live At The Celebrity Theater, Phoenix, AZ. 17th Octorber 1971

Live In Phoenix 1971
(HR-R03035 : 1CD-R)
 『MASTER OF REALITY』ツアー開始から約3ヶ月後、アリゾナ州フェニ
ックスでのライヴを収めたオーディエンス録音。

 明度は悪くないものの全体的に音が歪み気味で、オーディエンス録音に慣
れたファンでなければ厳しい録音かも知れないが、本作の特徴は会場の熱気
をストレートに収めた実況録音の面白さにある。


 冒頭からいきなり熱狂的な盛り上がりで、オンに入っているテーパー周囲
の話し声も妙にハイテンション(その観客もトリップしているのが容易に想
像される)。

 ライヴを始めるに先立ってマイクのチェックを繰り返すオジー、ギターを
爪弾くアイオミの様子も'70年代らしいムードを漂わせており、ライヴの雰囲
気をリアルに描き出している。他のライヴでも同様だが、ここでも「War
Pigs」や「Iron Man」・「Children Of The Grave」は恐るべき音圧で聴き手
をノックアウトする。"轟音を浴びる"側面があった当時のサバス・ライヴを
体験する意味でも、出来るならばスピーカーから大音量で再生して会場のム
ードを味わって欲しい録音だ。
1. Introduction / 2. N.I.B. / 3. War Pigs / 4. Sweet Leaf / 5. Iron Man
6. Children Of The Grave / 7. Wicked World / 8. Paranoid / 9. Fairies Wear Boots




1972年3月17日:カリフォルニア州サンバーナディーノ公演(AUD)
Live At Swing Auditorium, San Bernardino, CA. 17th March 1972

San Bernardino 1972
(Power Gate-152 : 1CD-R)
 『MASTER OF REALITY』ツアー後半、3月17日のカリフォルニア州サン
バーナディーノ"スウィング・オーディトリアム"における演奏をオーディエ
ンス録音で収めた1CD-R。


 音の広がりとナチュラルな質感は同時代でもトップ・レベルの素晴らしさ
で、音の分離感も当時としては充分以上に良好。他の音源では埋もれがちだ
ったギーザーのプレイも確かな存在感で、うねるようなベースラインをはっ
きり聴けるのがポイント。玉石混交している『MASTER OF REALITY』ライ
ヴ音源中でも、本録音はクオリティ面で安心して楽しめるソースだ。


 さらに初期型「Tomorrow's Dream」と「Snowblind」の歌詞違いバージョン
が聴けるのは、ツアー後半に当たるこの時期のみ。'72年3月のライヴを知る
上でもファンはぜひ押さえたい一本だ。

 同時期のオーディエンス録音としては『3.10.1972』(METAL SWORD, MS
CD 066)というタイトルも存在する。優れた見通しと迫力あるサウンドで演
奏を聴けるが、そちらはピッチが早くて正常な音像とは言えないので、まず
は本音源を選ぶべき。
1. War Pigs / 2. Into The Void / 3. Iron Man / 4. Guitar Solo / 5. Black Sabbath
6. After Forever / 7. Wicked World / 8. Fairies Waer Boots / 9. Paranoid
"Demo From Acetate 1969"
10. When I Came Down