1970年
6月16日〜21日,2ndアルバム
「PARANOID」をレコーディング
7月17日,シングル「PARANOID」を
発表。スマッシュヒットに
8月31日,モントルー公演
『BLACK SABBATH』ツアー終了
9月4日,ジム・シンプソンを
マネージメントから解く
9月11日 ツアー再開
9月18日 イギリスにて
『PARANOID』リリースされる
9月24日,「Paranoid」で
トップ・オブ・ザ・ポップス出演
9月26日,ブレーメンにて
Beat-Club出演(2回目)
10月3日,ブリュッセル公演
10月下旬 初のアメリカツアー
11月7日,ポートランド公演
11月11日 ロサンゼルス公演
Whiskey A Go-Goにてライヴ
11月21日,サンフランシスコ公演
Fillmore Westにてライヴ
12月19日,パリ公演

1971年
1月1日 アメリカにて
『PARANOID』リリース
1月14日,シェフィールド公演
1月31日,オーストラリアにて
マイポンガ・フェス出演
2月5日,3rdアルバム製作開始
2月17日〜4月2日 
アメリカツアー2ndレグ
2月23日,イングルウッド公演
L.A.フォーラムにてライヴ
3月2日,チャペルヒル公演
3月9日,パラマス公演
3月25日,ウィチタ公演
3月26日,ダラス公演
4月2日,フィラデルフィア公演
4月5日,3rdアルバムの
製作作業が終了する
4月5日から13日にかけて
幻となった来日公演
4月18日,コペンハーゲン公演
4月26日,ロンドン公演にて
『PARANOID』ツアー終了
7月21日,3rdアルバム
『MASTERS OF REALITY』発表




『PARANOID』 発表まで (1970年6月から9月)
 『BLACK SABBATH』はその特異な音楽性だけでなく不気味なジャケット(表面はもちろん逆十字を用
いたインナー・デザイン等)も話題となり、英国8位にランクされた。最終的には42週連続のチャー
ト・インでプラチナムを獲得する。ヨーロッパにおけるライヴも好評で、バンドは休む間もなくライヴ
漬けの日々を送る事になった。


 その真っ最中の1970年6月16日から21日にかけて、バンドは次回作のレコーディングを行う。すでに
ライヴ演奏していながら先のアルバムには用いなかった「War Pigs」や「Fairies Waer Boots」ほか、
「Iron Man」や「Electric Funeral」,「Hand Of Doom」といった、後々まで代表曲とされるナンバー
の数々を練り込んだ上で収録した。

 この時”シングル用に使える楽曲を”という声を受けてレコーディングした「Paranoid」は、アルバ
ムに先駆けて'70年7月17日にシングル・リリースされる。バンドにとって思わぬヒットとなったこの曲
は、当初『WAR PIGS』の予定だった2ndアルバムのタイトルを『PARANOID』と変更させた。これがバ
ンド随一の代表曲のみならず、ハードロックのスタンダードとして今に至る。



『PARANOID』 Tour (1970年9月11日 〜 '71年4月26日)
 バンドはアルバム発表に合わせ、1970年9月11日のスワンシー公演より『PARANOID』ツアーを開始す
る。イギリスおよびヨーロッパからスタートしたこのツアーでは、10月30日より約一ヶ月間の日程で初
のアメリカツアーが実現し、カリフォルニア州での初ライヴが'70年11月11日の"Whiskey A Go Go"での
ショウとなったのである(2011年に行われた「再結成」記者会見はこの故事に因んでいる)。


 '71年4月26日まで行われた『PARANOID』ツアーでは、およそ5か月間びっしりとライヴ日程が組み
込まれ、一日二公演もしばしば確認できる。




1970年9月26日 西ドイツ,ブレーメン "Beat-Club"(PRO-SHOT / SBD)
Live at Radio Bremen Studios, Bremen, West Germany, 26th September 1970

Black Mass
(Video CD)

Musik Laden Live
(DVD)

Beat Club 1970
(DVD-R)
1. Paranoid / 2. Iron Man
 『BLACK SABBATH』ツアー中に出演した前回の"Beat-Club"出演から4か月後、『PARANOID』リリース直後のヨ
ーロッパツアー中に、サバスは再びブレーメンのスタジオで同番組に出演する。

前回はカヴァー曲の「Blue Suede Shoes」を(半ばジョークで)演奏していたが、この時は満を持して新曲の
「Paranoid」そして「Iron Man」を演奏し、上昇一途のプレイを見せている。この時もバンドの背後には画面効果が
フィーチャーされ、サイケで前衛的、退廃的なムードを醸す。メンバー達の怪しい外見も手伝って、観る者に強烈な
印象を与える映像だ。

 同時期の9月24日、サバスは本国イギリスでもBBCの"トップ・オブ・ザ・ポップス"に出演。「Paranoid」を披
露し、シングル・ヒットの後押しをしている。

 2018年秋に公開されQUEENのヒストリー映画『BOHEMIAN RHAPSODY』でも描かれたように、"トップ・オブ・ザ・
ポップス"は基本的にマイム演奏(要するに口パク)が求められ、サバスも同番組ではその"規則"に従っている。

 また9月29日にもオランダでテレビ出演し、ここでも「Paranoid」をマイム演奏している(この映像はヒストリ
ー・ビデオ『THE BLACK SABBATH STORY Vol.1』でモノクロ映像が採用されているが、場所がベルギーと誤って
いる。)




1970年10月3日 ベルギー・ブリュッセル公演(PRO-SHOT / SBD)
Live at Theatre 140, Brussels, Belgium 3rd October 1970

Ozzy Osbourne Years
Definitive Edition
(Non Rabel : 1DVD)

Paranoid: Super Deluxe Edition
CD-4
"Brussels 1970"

Brussels 1970
(Zodiac-346 : 1CD + 1DVD)
1. Tune Up #1 / 2. Paranoid / 3. Hand Of Doom / 4. Rat Salad / 5. Iron Man
6. Black Sabbath / 7. Tune Up #2 / 8. N.I.B. ・9. Behind The Wall Of Sleep
10. War Pigs / 11. Fairies Wear Boots
 長らく『PARANOID』ツアーの主要映像として知られるプロショット。
 従来"1970年12月19日,フランス・パリ,オリンピア・シアター公演"として認知され、定番ゆえに様々なタイトル
が生み出されてきた。オフィシャルのヒストリー・ビデオでも「N.I.B.」などが採用されており、多くのファンが一
度は目にしたであろう、初期サバスの代表的映像素材である。

 これまで登場してきた映像は、フィルムやビデオ・テープから二次的に起こしたコピー素材がほとんどで、輪郭が
甘かったり、色にじみが目立つものが多かった。しかし2012年に登場したプレスDVDタイトル『OZZY OSBOURNE
YEARS: Definitive Edition』
では、画質・音声とも劇的にクオリティが向上した。このリリースとほぼ同時期
に、ライヴの日付および会場も"
1970年10月3日,ベルギー・ブリュッセル公演"と判明し、マニアの認知も刷新され
た。

 前述の通り、『OZZY OSBOURNE YEARS: Definitive Edition』では画面の解像度や発色の豊かさに加え、サ
ウンドもよりクリアでエッジが鋭くなった。開演前の準備やチューンナップでは茶目っ気たっぷりだった若きオジー
やアイオミ、ギーザーとビルが、「Paranoid」や「N.I.B.」など演奏に没入すると髪を振り乱し、何かに憑かれたよ
うなアクションでヘヴィな楽音を放つ様子は圧巻。映像におけるライヴの展開は従来と同じく"2部構成"で、当日の
正しい曲順では無いと思われるが、演奏後のバックステージにおけるメンバーの姿も含め、'70年のステージ風景を
マスター・クオリティで蘇えらせた本映像は破格の見応え。既発映像を持っているマニアも乗り換え必至だ。


 『PARANOID』スーパー・デラックス・エディションの"Disc-4"に収録された『BRUSSELS 1970』は、映像ではな
く音声トラックをもちいた音源。折角なのだから映像をきちんと公式化して欲しかったのが本音だが、音源も充分以
上に楽しめる。モノラルで平板な音像なのだが、明度はクリアで音の芯は太い。アイオミとギーザーのプレイ豊かな
低音で描かれ、オジーのヴォーカルも突き抜けるような溌剌さ。初期サバスの凄みを伝えるライヴ素材だ。




1970年11月7日 メイン州ポートランド公演(AUD)
Live at Sullivan Gymnasium, University Of Southern Maine, Portland, ME 7th November 1970

Portland 1970
Reel To Reel Master
(Zodiac-304 : 1CD)
 『PARANOID』ツアーが始まっておよそ1か月半、サバスは初めてのアメ
リカ・ツアーを開始する。この1970年北米ツアーにおける音源は、下記の11
月21日,サンフランシスコ"フィルモア・ウェスト"公演が定番であったが、
マニア間ではもうひとつ、北米5公演目に当たるポートランド公演の音源が
「良好な音源」として知られていた。その音源を「近年になって発掘された
マスター・リールからダイレクトにデジタル化した」とされるソースが、
2018年にプレスCD化されている。 


 元マスターの段階では「War Pigs」,「Fairies Wear Boots」にテープチ
ェンジが見られ、さらに後者ではノイズが入っていたため、"フィルモア・ウ
ェスト"音源と比べ一枚落ちの印象もあったのだが、このプレスCDでは音が整
理され、音量の平均化やノイズの補正が行われ、トレーダー音源と比較して
聴き易くなっている。50年近くの年月を経たテープ素材だけに、ヴィンテー
ジな質感が漂うものの、触れ込み通りマスターのゼネレーションは明らかに
上位。確かな鮮度に裏付けられた音の明度は、バンドの演奏をリアルに蘇ら
せる。

 何より凄いのがバンドのモチベーションだ。熱いエナジー剥き出しの荒々
しいプレイはブリュッセル公演をも凌ぐ。この北米ツアーは観客やファンの
口コミでバンドの評判が広まり、アメリカでのサバス人気に火が着いた。現
在に至るオリジナル・サバス伝説は、1970年秋の一か月間で、その基礎を築
いたと言える。

 また、この『PARANOID』ツアーではおよそ半年間のツアー期間中に、セ
ットリストだけでなくバンド・チューニングやプレイ面にも変化が生じてい
る。序盤の本音源と、最終盤の1971年4月『ETERNAL VOID OF DOOM』(後
述)を聴き比べると、それが良く解るだろう。
1. Intro / 2. Paranoid / 3. N.I.B. / 4. War Pigs / 5. Behind The Wall Of Sleep
6. Iron Man / 7. Hand Of Doom / 8. Fairies Wear Boots




1970年11月21日 カリフォルニア州サンフランシスコ公演(AUD)
Live at Fillmore West, San Francisco, CA. USA 21st November 1970


Fillmore West 1970
(Non Rabel : 1CD-R)
 バンドが初めて本格的なアメリカ進出を実現した'70年秋のツアーより、11
月21日のカリフォルニア州サンフランシスコ"フィルモア・ウェスト"でのラ
イヴを収録している。

 11月末まで行われたアメリカツアーのうち、カリフォルニア界隈では11月
11日から15日までロサンゼルスの"ウィスキー・ア・ゴーゴー"で5日連続、
この"フィルモア・ウェスト"でも19日から22日まで4日連続、しかも全て一
日2回のステージをこなすと言うハード・スケジュール(しかもバンドはラ
イヴの後に、ドラッグ・アルコールそしてグルーピーの、いわゆる"ロック
ン・ロール・ライフ"にどっぷり漬っていた)。

 若いとは言え、当時のサバスは色々な意味で驚異的だった。

 このステージも昔から定番のライヴ・テープである。十年ほど前には
Metal Swordレーベルから『LIVE AT FILLMORE WEST』(MS CD 065)とい
うアイテムも出ていたが、そちらはテープスピードが速く、ライヴを正確な
音像で楽しむことは出来なかった。それに対し本作はピッチも正常なうえ、
より上位の素材を用いているらしく音の明度や解像度も優れており、レアな'
70年ライヴを安心して聴き込める。

 セットは『MONTREUX 1970』とほぼ同じだが、このヴィンテージな質感は
優秀な客席録音ならでは。「Behind The Wall Of Sleep」や「Hand Of Doom
/ Rat Salad」などは、こちらのほうがコクとグルーヴが強調されているよう
に思われる。またラストの「Wicked World」ではギターソロやバンド・ジャ
ムが内包され、のちに続く長大なメドレー形式の萌芽となっている。
1. Paranoid / 2. N.I.B. / 3. War Pigs / 4. Black Sabbath / 5. Iron Man
6. Behind The Wall Of Sleep / 7. Hand Of Doom 〜 Rat Salad
8. Fairies Wear Boots / 9. Wicked World




1970年12月12日 デンマーク・コペンハーゲン公演(AUD)
Live at K.B. Hallen, Copenhagen, Denmark 12th December 1970

Copenhagen 1970
(Zodiac-407 : 1CD)
 サバスにとって初めての北米ツアーは、10月30日から11月28日にかけて挙
行され、各地で熱狂的な盛り上がりを見せた。バンドは休むことなく12月5
日よりヨーロッパでのライヴを再開して、波乱の1970年を締めくくる。


 その70年12月の2公演目となるコペンハーゲン公演は、かねてから断片的
に知られていた。そのうち「Wicked World」の約20分間は、クリアネスやダ
イレクト感から"サウンドボードではないか?"と言われていた。

 全長版が発掘されたのは2020年の夏。実際には客席録音だったが、聴き易
さや迫力、クリアさともに同年トップクラスの素材だった。


 8月末モントルー公演のサウンドボード音源では未収録だった「Black
Sabbath」に、前述の「Wicked World」を加え、約73分の演奏時間も驚きだっ
たが、1曲目とアンコールでも「Paranoid」がプレイされていた事実(おそ
らくは想定しないアンコールで、プレイしうる曲が無かったため?)はこの
発掘で初めて知られ、マニアほど衝撃を受けた。

 ヴィンテージな質感で味わう珠玉のフルセット。8月のモントルーと10月
のブリュッセルに次ぐ、70年サバスの代表的ライヴ・ソースと断言する。
1. Intro. / 2. Paranoid / 3. N.I.B. / 4. War Pigs 5. Behind The Wall Of Slee
6. Iron Man / 7. Black Sabbath / 8. Hand Of Doom / 9. Wicked World
10. Guitar solo / 11. Wicked World (reprise) /12. Fairies Wear Boots / 13. Paranoid





1971年1月14日 イギリス,シェフィールド公演(AUD)
Live at City Hall, Sheffield, UK 14th January 1971

Master Of Sheffield
(LAF-165 : 1CD-R)
 タイトルは3rd風の印象だが『PARANOID』ツアー中盤の音源。
 この日はセットリスト的に大変特殊。当時ほとんど毎日のように演奏して
いた「N.I.B.」が姿を見せない代わり、歌詞違いの初期バージョン「Into
The Void」と「After Forever」が同時に演奏された(どちらもこの日が初演
とみられる)極めてレアなライヴ。'70年代のオリジナル・サバス時代でこの
両曲が揃って取り上げられたライヴは、現時点でこの日しか知られていな
い。'70年代初めのサバスはライヴを通じて製作段階の曲を練り上げていたよ
うで、未発表曲もしばしばステージで取り上げている。この日はその典型的
なショウと言えるだろう。

 40年以上前の客席録音だから、場面によってはテープ状態が不安定な個所
はあるが、明度はまずまずで、全体としては良好なヴィンテージ録音だ。


 ボーナス収録の「When I Came Down」は、前述したとおりノーマン・ヘイ
ンズのカヴァーで、'69年9月頃の録音とみられる。曲調は「Fairies Wear
Boots」序盤部分に近い感じで、ギター/ベースリフに、オジー独特のカン高
いのっぺりした声が載る。コレクターズ・アイテムとしては本タイトルが初
出だった。"Edit"とあるように、ワンコーラス,わずか53秒のみの非常に短
い収録。
1. War Pigs / 2. Into The Void / 3. Iron Man / 4. Guitar Solo / 5. Black Sabbath
6. After Forever / 7. Wicked World / 8. Fairies Waer Boots / 9. Paranoid
"Demo From Acetate 1969"
10. When I Came Down




1971年1月18日 イギリス,ニューキャッスル公演(AUD)
Live at Newcastle City Hall, Newcastle-Upon-Tyne, UK 18th January 1971

Newcastle 1971
(Shades-1235 : 1CD-R)
 1月5日から始まった1971年初頭のイギリスツアー9公演目。上記したシ
ェフィールド公演(6公演目)は以前から良く知られた録音素材だが、この
ニューキャッスルは2020年に発掘されるまで存在そのものが知られていなか
った。

 録音者はアレックス・ウィルソンという人物で、69年のダンフリーズ公演
を記録した人物と同一との事。モノラル録音だが、半世紀前でも充分に聴き
易い素材で、楽音の輪郭も迫力も良好だ。

 この日の特徴はレアな「Into The Void」と「Afte Forever」。これらプロ
トタイプは演奏日が限定されていると思われたが、シェフィールドに続き本
公演でも演奏されていた事を考えると、同時期の英国ツアーでは普通にセッ
トインしていたように思われる。またシェフィールド公演でも「Paranoid」
がオープニングだったが、欠落したと考えられる。

 そして最大の特徴が、アンコールで飛び出すこの日2度目の「Paranoid」
だ。70年12月のコペンハーゲンでもそうだったが、当時のサバスはまだオリ
ジナルのレパートリーが不足気味で、人気曲を繰り返し演奏していたと思わ
れる。
1. Paranoid /2. N.I.B. / 3. War Pigs / 4. Into The Void / 5. Iron Man
6. Black Sabbath / 7. After Forever / 8. Wicked World / 9. Guitar Solo
10. Wicked World (Reprise) / 11. Faeries Wear Boots / 12. Paranoid




1971年アメリカツアー (2ndレグ)



1971年2月23日 カリフォルニア州イングルウッド公演(AUD)
Live at The Forum, Inglewood, CA 23rd February 1971

L.A. Forum 1971
(Shades-113 : 1CD-R)

L.A. Forum 1971
(Zodiac-431 : 1CD)
CD盤 『L.A. Forum 1971』

01. Introduction
02. Paranoid
03. N.I.B.
04. War Pigs
05. Black Sabbath
06. Iron Man
07. Wicked World
08. Guitar Solo Incl. Orchid
09. Wicked World (Reprise)
10. Fairies Wear Boots
11. Aftershow Conversation
CD-R盤『L.A. Forum 1971』
1. Intro. / 2. Paranoid / 3. N.I.B. / 4. War Pigs / 5. Black Sabbath
6. Iron Man / 7. Wicked World / 8. Fairies Waer Boots
"1969 Demos"
9. The Rebel / 10. When I Came Down / 11. Thomas James / 12. Early One Morning Blues
 '71年2月中旬から4月初旬まで行われた二度目のアメリカツアーから、前半のロサンゼルス公演を収録したオー
ディエンス録音。当時の標準的な(それでいて圧巻な)演奏を体感できる。この頃のステージは日によって曲の入れ
替えや順番の変更が大きく、レギュラー・ライヴでも"定番"が出来る前の手探り感が面白い。


 この日のアイテムは2種類が存在する。どちらも同じタイトルなので紛らわしいが、録音素材は完全な別物。

 CD-R盤は旧来よりマニア間で知られていたマスターで、2010年頃にアイテム化された。演奏の輪郭はしっかりして
いるが、やや篭り気味で、良く言えばヴィンテージ、悪く言えばボンヤリした音像。しかしアングラでヘヴィなムー
ドを楽しむという点では、必ずしも悪くはない。

 さらに本音源の特徴は後半に4曲収められた'69年のものとされるデモ。「The Rabel」は『BLACK SABBATH』ツア
ーの項で述べた通りだが、「When I Came Down」は同じフレーズが何度も繰り返されている。「Early One Morning
Blues」はデモ音源では無く、1969年・ダンフリーズにおけるライヴ・ソース。「Thomas James」はフェイクとされ
ているが、ジャミング風のセッションで「Black Sabbath」らしいフレーズが出るなど、面白い場面はある。


 プレスCD盤は2020年に突如発掘された新素材。同時期に"マイク・ミラード"音源が大量に音盤化されていた事もあ
ったので、"L.A. Forumでの優良録音"という共通項から「これもミラードか?」と思われたが、本録音はロバート・
リッチという人物の録音。

 しかし録音の優良さは間違いなく、サウンドボード並みにダイレクトでド迫力。若干低域の入力が強すぎる場面は
あるが、プレイの細やかなニュアンスまで鮮やか。演奏を聴き込みたいなら迷う事無くプレス盤を選ぶべき。さらに
この録音では、ライヴの終了後にテーパーがショウの感想を吹き込んでいるのも特徴。純粋に演奏や会場のムードに
浸りたい人は「テーパーの存在感」が大きくて気になるだろうが、ライヴの興奮と熱狂をストレートに感じる、証言
の一種類ではある。




1971年3月2日 ノースカロライナ州チャペルヒル (AUD)
Live at University Of North Carolina, Chapell Hill, NC. USA 2nd March 1971
1971年3月9日 ニュージャージー州パラマス (AUD)
Live at Century's Paramus Theatre, Paramus, NJ. USA 9th March 1971

Into The Void 1971
(Non Rabel : 2CD-R)
Disc-1: Chapell Hill 1971

1. N.I.B.
2. War Pigs
3. Black Sabbath
4. Iron Man
5. Into The Void
6. Wicked World
7. Guitar Solo
8. Wicked World (Reprise)
9. Paranoid
10. Fairies Wear Boots
Disc-2: Paramus 1971

1. Intro.
2. N.I.B.
3. War Pigs
4. Black Sabbath
5. Iron Man
6. Into The Void
7. Fairies Wear Boots
8. Paranoid
 ショップのプレゼント・タイトルとしてリリースされた2CD-R。タイトルどおり1971年ツアーにおける「Into The
Void」演奏ライヴを、現時点で確認されている内の半数、2公演分を一つのパッケージにまとめている。

 ディスク1に収められた'71年3月2日のチャペルヒル公演は、当時サバスがアメリカツアーでしばしば会場に選
んだような、カレッジにおけるライヴのひとつ。テープの保存状態があまり良くなかったらしく、所々で素材の劣化
による音の篭りや偏りが見られ、曲間ではマスター・リール由来のギューンという回転音まで存在するが、逆にこの
独特な個性もライヴ・テープらしくて面白い。音の明度はかなり良好で、濁りがさほど気にならない鮮度も、大元か
それに近い世代のテープから音が起こされた事を想像させる。オジーのヴォーカルやアイオミのギターも明瞭で、ビ
ルのドラムも存在感がある。リアルな空気感に支えられた臨場感も瑞々しく、40年前の客席録音としては及第点を余
裕で超える音質だ。

 ディスク2はチャペルヒル公演からちょうど一週間後、3月9日のニュージャージー州パラマス公演。ディスク1
のような音の広がりには欠け、ややレンジの狭い録音だが、ステージとテーパーとの距離は近いようでダイレクト感
があり、また録音も安定している。この日は「Wicked World」が未収録で1時間弱の収録内容だが、そのほかの楽曲
はきちんと網羅されている。むしろライヴが冗長にならず程よい演奏時間にも思えるくらいで、聴き手も意識を集中
したまま一気に聴き通せる"お手ごろ"な音源だと言えなくも無い。

 2つのライヴとも音質で言えば後述の『ETERNAL VOID OF DOOM』には及ばないのだが、現代にまで連なるサバ
ス・クラシックを凝縮したセットリストは美味だし、歌詞違いの初期版「Into The Void」は2公演のどちらも興味
深い。'70年代における貴重なライヴの記録として、マニアは手元にコレクションしたい一本だろう。




1971年4月18日 デンマーク,コペンハーゲン(AUD)
Live at Falkoner Teatret, Copenhagen, Denmark 18th April 1971


"Definitive Vinyls" Disc-2
(LAF-1324/1325 : 2CD-R)

Eternal Void Of Doom
(Non Rabel : 1CD)
1. N.I.B.

2. War Pigs

3. Guitar Solo

4. Black Sabbath

5. Iron Man

6. Into The Void

7. Paranoid

8. Fairies Wear Boots
 『PARANOID』ツアー末期、'71年4月18日のデンマーク・コペンハーゲン公演のオーディエンス・ソース。同名の
海外製アナログ・ブート『ETERNAL VOID OF DOOM』はマニア間で有名なタイトルだが、プレスCDタイトルでは、
用いられたソースが録音者提供によるオリジナル・リール・マスターを元にしているとされる。アイオミのギターも
マイルドなふくよかさとナチュラルな質感は「N.I.B.」から恐ろしいほどに優れている。イントロから客席をガツン
と打ちのめす「War Pigs」や「Iron Man」のヘヴィネス、底なし沼のように深い「Black Sabbath」の不気味さも、"
この音"だからこそ活きているといえる。本公演を含め現時点で4回しか確認されていない'70年代の「Into The
Void」をこれ程のサウンドで聴ける事に、喜びを覚えないサバス・マニアなど果たしてこの世にいるだろうか? グ
ルーヴが地響きとなって押し寄せる「Fairies Wear Boots」は凄い!としか言葉が出ない。

 テーパーが「自分で録った」と言っている以上オーディエンス録音に違いはないが、何の但し書きもなく聴かされ
れば、誰もがサウンドボードと勘違いするだろう。ほとんど奇跡のヴィンテージ・ライヴである。

 なお本録音ではギターソロを含む「Wicked World」が未収録(当時のセットを考慮すれば、演奏されていた可能性
はあるが・・・・・・)。この優良なヴィンテージ・サウンドで繰り広げられる「Wicked World」とギターソロの約20分を
体験できないのは残念至極ではあるが、それでもアイテムの価値が揺らぐものではない。『PARANOID』ツアーを代
表するオーディエンス・マスターだ。


 『DEFINITIVE VINYLS』は、コペンハーゲン公演に加えて、70年ツアーの定番である6月26日,ベルリン公演
を、海外流通のLPブートより起したとする2枚組CD-R。どちらの音源もプレスCDタイトルと比べて、アナログ起こし
の印象がより強い。明度はこちらも優れているが、(特にベルリン音源においては)正直ノイジーな印象がある。




幻のオリジナル・サバス来日公演 (1971年4月5日 〜 13日)
 サバスは3枚目のスタジオ・アルバム『MASTERS OF REALITY』製作と平行し、'71年2月17日から
4月2日にかけて二度目のアメリカツアーを実施する。アルバムの作業が全て完了したのは、アメリカ
ツアー終了後の4月5日であった。


 その1971年4月5日に、本来ならばサバスが来日していた。
 日本国内では3月の時点ですでに「ブラック・サバス来日公演」がアナウンスされ、雑誌等に告知が
なされていた(一説にはキョードー東京主催による"ロック・カーニバル"への出演が予定されていたと
いう)。

 また、大阪公演が4月7日と9日、名古屋でのショウが8日または10日に組まれていたようだ。

(海外サイトBLACK SABBATH Onlineでは1972年となっているが、これは前年の誤りと思われる。また同
サイトでは『PARANOID』ツアー中の1971年2月3日に東京でプレス・レセプションの予定があったが、
キャンセルになったようだとしている)
 しかしこの来日公演は、チケットの発券前に中止
がアナウンスされ、結局実現しなかった。


 メンバー(それもアイオミ)の病気によりキャン
セルという説もあるが、バンドメンバーは'71年来
日プランの存在自体を記憶していない。


 後年、伊藤政則氏がアイオミにこの件を質問した
際「それは何の事だ?」と逆に聞き返されたとい
う。


 1971年4月と言えば、ディープ・パープルに先立
つ事1年4か月,レッド・ツェッペリンと比べても
5か月早い。アメリカでは精力的なツアーで伝説を
築いたサバスであったが、この1971年来日が実現し
なかったことで、日本でのファンベース構築は後れ
を取った。返す返すも悔やまれる。