1986年
SEVENTH STAR

1986 - 1987年
RAY GILLEN Vocal





1986
SEVENTH STAR / セブンス・スター

 サバスが事実上の解体状態に陥った1985年、アイオミはソロ活動
を模索し、複数名のヴォーカルを起用したソロ・アルバム製作を企
画する。デイヴィッド・カヴァデールやロバート・プラント,さら
にロブ・ハルフォードらを起用するこの考えは、ビジネス面の問題
によって頓挫したが、最初にやって来たシンガー,グレン・ヒュー
ズの神がかり的歌唱もあって、全曲同一メンバーによるバンド然と
した作風で完成された。しかしこの"アイオミ初のソロ作品"はレコ
ード会社の意思によって、"BLACK SABBATH Featuring TONY IOMMI"
名義での発表となった。


 内容的にはグレンの'80年代ベストとも言いうる優れたもの。
 攻撃性の高い「Infor The Kill」,サバス屈指のバラード「No
Stranger To Love」,壮大な「Seventh Star」,そして「Angry
Heart」から「In Memory」での叙情的なラスト…。頭から終わりま
で良く練られた構成と楽曲レベルの高さは、疑いようも無く同時代
トップクラスだった。しかし名義問題、シンガーの個人的問題がこ
の作品を「隠れた」ものとしてしまう。

 だが近年グレンがソロライヴ等でこの作品の曲を取り上げた事も
あり、現在では再評価され、名作の呼び声も高くなっている。
Released: 28 January 1986
Recorded: 1985 at Cheshire Sound Studios, Atlanta
Producer: Jeff Glixman
01. In For The Kill
02. No Stranger To Love '86年ツアー初期のみ演奏。レイも加入直後は歌っていた。
03. Turn To Stone '86年ツアーのみ。 ドラムソロを挟む形で演奏。
04. Sphinx (The Gurdian) タイトル曲の導入として、'86年ツアーを通して演奏
05. Seventh Star '86年ライヴのハイライトとして毎回演奏された。
06. Danger Zone '86年ツアーのみ演奏。レイの熱いハイトーンはこの曲にぴったり。
07. Heart Like A Wheel '86年ツアーを通して演奏された。 '90年にも取り上げられた。
08. Angry Heart グレン在籍時、ツアー初日だけ演奏した。
09. In Memory
"Deluxe Edition" Disc 1に収録
10. No Stranger To Love
  (Alternate Version)
アルバムとは別ミックスのシングルバージョン。コーラスをハーモニーでフ
ィーチャーし、グレンのソロ曲のような色合いが強くなっている。





1986 - 1987
RAY GILLEN Vocals


SEVENTH STAR
"Deluxe Edition" (2010)

THE ETERNAL IDOL
"Deluxe Edition" Disc 2 (2010)
 本来はアイオミのソロ作品だった「SEVENTH STAR」が、ツアー開始に伴いBLACK SABBATH名義になると、シンガー
のグレン・ヒューズは不満を募らせた。さらにコンディションを崩していた彼は、ライヴでも満足な歌唱が出来ず、
わずか5公演で脱退。後任にレイ・ギランが迎えられツアーが継続された。そして「SEVENTH STAR」ツアー終了後、
サバスはレイ・ギランを擁する編成で新作製作に取り掛かる。

 このレイ・ギラン在籍時の音源は、長らくブートの独壇場であった。しかし2010年秋、「SEVENTH STAR」と「THE
ETERNAL IDOL」の2作品がデラックスエディションとしてリリースされた際、レイ在籍時の音源がボーナスディスク
として付属し、ライヴおよびデモを公式音源として聴けるようになった。


 「SEVENTH STAR」のデラックスエディションのボーナスは、'86年6月2日のロンドン"ハマースミス・オデオン"公
演のライヴテイク。しかし「同日のブートをマスターに使ったのか?」と思えるほど、公式としては厳しい音質。確
かに過去のブートで気になったヒスノイズや音の乱れは低減・解消されている。割り切って聴けば充分楽しめると思
うのだが、それもやはりブートレベルでの話で、これが公式、しかもデラックスエディションというのは少々塩辛さ
を覚える。しかし、レイのライヴ音源が公式化されたという意義そのものは大きい。

 「THE ETERNAL IDOL」のボーナスは、以前からマニアに知られるレイ在籍時のデモ音源。ここでは2010年春にブー
ト流出した上位素材とほぼ同じテイクが、音質補正を経て収録されている(デモ音源の比較は下記に別掲する)。

 これらの音源が公式化された事で、レイ・ギランが名実ともに歴代サバス・シンガーの一人として認められたと表
現しても、過言ではないだろう。
SEVENTH STAR Deluxe Edition
Disc 2 "Live At Hammersmith Odeon"
1. The Mob Rules
2. Danger Zone
3. War Pigs
4. Seventh Star
5. Die Young
6. Black Sabbath
7. N.I.B.
8. Neon Knights
9. Paranoid
THE ETERNAL IDOL Deluxe Edition
Disc 2 "Ray Gillen Session"
1. Glory Ride
2. Born To Lose
3. Lost Forever
4. Eternal Idol
5. The Shining
6. Hard Life To Love
7. Nightmare
8. Ancient Warrior



1986 - 1987
THE ETERNAL IDOL (Demo Version)


Version 1

Version 2

Version 3
 「SEVENTH STAR」ツアー終了後、サバスはレイ・ギランを擁する編成で新作製作に取り掛かる。この際にレイ・ギ
ランが残したテイクは、当時からマニアの間で有名だった。このデモは過去に2種類のバージョンが知られていた。


・「完成形に近くても音質がもう一つで不完全収録」の"Version 1"
・「音質がまずまず良くてもギターソロが無いテイクが多く、曲として不完全」の"Version 2"

 上記したとおり、これらは一長一短の音源だった。しかし'10年5月になって新たなテイクが登場した。

・「インスト以外全曲収録。多くでギターソロが聴ける上に、音質面も公式級」な"Version 3"である。

 この"Version 3"は、2010年秋になって「THE ETERNAL IDOL」デラックスエディションに収録される形で公式化さ
れた。デラックスエディション版と初出ブート版では音質補正のほか「Ancient Warrior」のピッチに微妙な違いが
見られるものの、ほぼ同一の音源(しかし「Ancient Warrior」のピッチはブートの方が正しい模様)である。

 アルバムはデモに沿う形で完成されたが、従来のデモに未収録の「Scarlet Pimpernel」と「Nightmare」冒頭など
インスト曲は、やはりここにも含まれていない。この種のテイクはレイ離脱後・マーティン加入の前後になって製作
されたと思われる。さらにレイとマーティンというヴォーカルの個性による触感の違いはかなり大きい。「Born To
Lose」や「Lost Forever」といったメタリックな楽曲は、よりアメリカナイズされたレイの歌のほうがマーティンよ
りも馴染んで聴こえる。捉えやすいポップなメロディに湿度たっぷりの歌声は、日本だけでなくアメリカでも十分受
け容れられただろう。プロデューサーがレイと衝突しなければ、私たちは「大衆化したポップなサバス」をこの先目
撃していたかもしれない。

 なお、この作品での作曲クレジットはアイオミ一人になっているが、歌詞やヴォーカルメロディは、多くが当時作
曲・録音に関与したベーシスト、ボブ・ディズリーのものであるらしい。
・The Shining "Version 2"はエンディングが短い。どのバージョンもギターソロ無し。
・Ancient Warrior "Version 1"と"Version 3"はギターソロ入り。
・Hard Life To Love "Version 1"と"Version 3"はギターソロ入り。
・Glory Ride "Version 2"はエンディング違いのうえ、ギターソロ無し。
・Born To Lose 全てのバージョンでギターソロ入り。
・Lost Forever "Version 1"と"Version 3"はギターソロ入り。
・The Eternal Idol この曲はもともとギターソロ無し。
・Nightmare "Version 1"では未収録。冒頭のインストは付属していない。