1987年
THE ETERNAL IDOL

1989年
HEADLESS CROSS

1990年
TYR

1994年
CROSS PURPOSES

1995年
CROSS PURPOSES LIVE
FORBIDDEN





1987
THE ETERNAL IDOL / エターナル・アイドル

 トニー・マーティン加入後の第一作。
 収録参加メンバーの入れ替わり、プロデューサーの相次ぐ交代
劇、そしてアイオミの病気ダウンなど、度重なる紆余曲折の末によ
うやく完成した作品に対して、当初のプレスの論評は厳しいものだ
ったという。

 当時のトニー・マーティンについて、歌唱スタイルがロニー・ジ
ェイムズ・ディオと似ている、という批判も多かったそうだが、独
特の柔らかさを持つ声質や、透明感と伸びを併せ持つハイトーンを
聴くにつけ、その批判が不思議に思えてくる。


 楽曲そのものは、前任者のレイ・ギランが残したものをなぞって
いるが、超名曲「The Shining」ほか、サバスらしい曲展開の中に
ヴォーカルがしなやかに舞う「Eternal Idol」は明らかにマーティ
ンの声質が曲を引き立てている。他の曲も過去のものと比較しても
何ら見劣りはしない。

 誰よりもアイオミが出来映えに満足したのだろう。以後しばら
く、サバスはこのメロディアス路線の追及に邁進する事になる。
Released: 1 November 1987
Recorded: Air Studios, Montserrat, Air Studios and Battery Studios, London, October 1986 - March 1987
Producer: Jeff Glixman, Vic Coppersmith-Heaven, Chris Tsangarides
01. The Shining マーティンの代表曲として、その後のツアーでもたびたび演奏。
02. Ancient Warrior
03. Hard Life To Love
04. Glory Ride '87年のみの演奏。
05. Born To Lose '87年のみの演奏。
06. Nightmare
07. Scarlet Pimpernel '87年 - '90年にかけて、ギターソロ中に時折演奏された。
08. Lost Forever
09. Eternal Idol マーティンはソロライヴでこの曲を歌っている。
"Deluxe Edition" Disc 1での収録曲
10. Black Moon シングル収録曲。 コージー参加前のオリジナルテイク。
11. Some Kind Of Woman
シングル収録曲。 サバスらしからぬ明るい曲調が印象的。





1989
HEADLESS CROSS / ヘッドレス・クロス

 マーティン加入後の2作目。彼の時代でも代表作とされる。
 マネージメントおよびレコード会社との契約を一新したアイオミ
は、本格的なバンド再建へ向けて動き出す。その第一歩は、ともに
バンドを支えるキーパーソンの獲得だった。その人物とは歴戦の名
ドラマー,コージー・パウエルである。彼を得たアイオミは双頭体
勢でバンドを運営し、本作を作り上げた。

 ベースはギーザー・バトラー復帰のプランもあったが、この時点
では実現せず、ローレンス・コトルをセッションに招いた。


 マーティンは本作から作曲に関わるようになり、そのメロディセ
ンスを大いに発揮する。漆黒の世界に透明感あるヴォーカルを展開
し、歌詞世界にも欧州の伝説や歴史を織り込むなど、独特の世界観
とムードを持ち込んだ。彼の代表曲となった「Headless Cross」,
「Devil & Daughter」ほか、「Kill In The Spirit World」はコー
ジー無くしては有り得ない優れたパワーナンバー。「When Death
Calls」の壮大さは、ロニー時代とも一線を画する神秘的で荘厳な
世界観を演出した。

 アルバム発表に伴うツアーでは、ニール・マーレイがベースとし
て参加した。
Released: 24 April 1989
Recorded: August - November 1988
     The Soundmill, Leeds, Woodcray Studios, Berkshire, Amazon Studios, Liverpool
Producer: Tony Iommi, Cozy Powell
1. The Gates Of Hell
ショウのオープニングS.E.としてしばしば使われた。
2. Headless Cross
マーティン時代の主要曲。ショウで常に重要な位置を占めた。
3. Devil & Daughter
'89年のアメリカツアー、ヨーロッパツアー中盤まで演奏。
4. When Death Calls
マーティンの代表曲として、しばしば演奏された。
5. Kill In The Spilit World

6. Call Of The Wild
もとの曲名は「Hero」だったが、同時期のOZZY OSBOURNEに同名曲が存在した
ので、名前が差し替えられた。
7. Black Moon

8. Nightwing

・ Cloak And Dagger
シングルB面、ピクチャー盤にのみ収録。





1990
TYR / ティール

 マーティン加入後の3作目。サバスが前作ツアーと同一ラインナ
ップでアルバムを完成・発表させたのは、1981年の「MOB RULES」
以来約10年ぶり。本作は'80年以降のサバスにおいても、そのメロ
ディアス路線の頂点とされる。


 前作で描かれた欧州伝説の世界を発展させ、北欧神話に材を求め
た本作では、オープニングの「Anno Mundi」から幻想的でエピカル
なムードが漂う。相も変らぬヘヴィリフを奏でるアイオミ、剛直無
比なコージーのドラム、マーレイのテクニカルなベースライン、天
を舞うマーティンのヴォーカル、全てを絶妙にサポートするジェフ
のキーボード…。ベースなど低音の輪郭がやや掴みにくい場面はあ
るが、曲想や演奏はメロディアスなメタルの理想形といえる。

 「The Battle Of Tyr」-「Odin's Court」-「Vallhalla」の壮大
な組曲は聴く者を圧倒した。コージーのビートが強烈なスピードナ
ンバー「The Law Maker」や、マーティン流に「Black Sabbath」の
再来を試みた「The Sabbath Stones」など、他の曲の存在感も確か
なものであり、まさに全曲が名曲であった。

 あとはこの編成で世界を巡り、商業的な成功を収めるだけだった
のだが…。
Released: 20 August 1990
Recorded: February - June 1990 Rockfield Studios, Wales and Woodcray Studios, Berkshire,  
Producer: Black Sabbath
1. Anno Mundi '90年ツアーを通じて演奏。'94年にも数回取り上げられた。
2. The Law Maker '90年のツアーのみ。
3. Jerusalem
4. The Sabbath Stones '90年のアルバム発表に伴うツアーのみ演奏。
5. The Battle Of Tyr ツアー初日に「The Sabbath Stones」の導入で演奏。
6. Odin's Court ツアー初日に「The Sign Of Southern Cross」の導入として演奏。
7. Valhalla サバスではライヴ未演奏。アルバム同様の組曲は演奏されなかった。
8. Feels Good To Me ショウでの演奏はツアー初日のみ。ビデオクリップも製作された。
9. Heaven In Black
シングル盤「FEELS GOOD TO ME」収録
・ Feels Good To Me イントロを削除したシングル・バージョン。
・ Heaven And Hell (Live)
'89年モスクワ公演の音源。終盤の転調以降が編集されている。
・ Paranoid (Live) 同じく'89年モスクワ公演の音源。





1994
CROSS PURPOSES / クロス・パーパシス

 マーティン時代のスタジオ第4作。ロニーが去り、オジーとの再
結成話も事実上流れた時点でのリリースとなった事で、本作は「滑
り止め的に発表された作品」との印象で語られる事が多い。


 アイオミがバンドに残留したギーザーのアイディアを積極的に活
用した事から、それまでのマーティン作品と異なり、現代的でシリ
アスな世界観が作品を包む。SABBATH的ヘヴィネスとメロディがう
まく折り合いをつけているという点では、「MOB RULES」とも近い
印象がある。

 オープニングの「I Witness」,サバス史上でも屈指のメロディ
アスナンバー「Cross Of Thorns」の2大名曲を筆頭に、優れたバラ
ード「Dying For Love」,「TYR」に収録されていても違和感ない
「Evil Eye」などは素晴らしい。中間部の劇的な転調を上手く利用
し、優れたメロディを乗せた「Immaculate Deception」は見事。ま
た「DEHUMANIZER」延長線上のようなヘヴィナンバーがみられるの
も特徴。特に「Virtual Death」はその最たるもので、ダウナーな
ムードが印象的。

 ロニーやギーザーの復帰,マーティンの再加入でバンドが大きく
変化した'90年代以降、サバス(というよりアイオミ)は、旧メン
バーとの再共演や再合流を行うようになる。
Released: 31 January 1994
Recorded: 1993, Monnow Valley Studios, Wales
Producer: Leif Mases, Black Sabbath
01. I Witness
'94年ツアーのみ演奏。
02. Cross Of Thornes
'94年ツアーのみ演奏。
03. Psychophobia
'94年ツアーの定番曲。公式ライヴでも確認出来る。
04. Virtual Death

05. Immaculate Deception
'94年アメリカツアーのみ演奏。
06. Dying For Love
終演後の場内BGMとして使用された。
07. Back To Eden

08. The Hand That Rocks The Cradle
ライヴでは未演奏だが、ビデオクリップが製作された。
09. Cardinal Sin

10. Evil Eye

12. What's The Use
日本盤のみボーナストラックとして収録。





1995
CROSS PURPOSES LIVE


CD + VIDEO (1995)

Short Version DVD (2003)

Long Version DVD (2010)
Released: 4 April 1995
Recorded: Hammersmith Apollo, London, 13 April 1994
Producer: Black Sabbath
 '94年4月13日のロンドン・ハマースミス公演を収録したもの。
 '95年3月にビデオとCDがセットになってリリースされたが、日本版はリリースされず、不完全版の(しかも半ブート)DVDが出たのは'03年になってから。しかし2010年になってDVDもようやくVHSと同内容になった。

 CD音源は基本的にビデオと同一音源。冒頭にはビデオと同じく「Into The Void」や「AnnoMundi」の一部を利用したオープニングが付いている。そのビデオと比較して、当時のセットの特徴である「Anno Mundi」などをカットしているが、マーティンの高音が厳しいこれらをカットしたことで音源の質はむしろ向上している。またこれにより「オジー時代のレア曲」+「当時の新曲」というライヴの側面がよりストレートに打ち出されているのも興味深い。
 ライヴの流れでは「Black Sabbath」の登場が少々早いような気はするものの、オジー時代のクラシックとマーティン時代以降の曲がほぼ交代で登場し、展開のメリハリも利いている。「Into The Void」や「The Wizard」といった珍しい選曲でもマーティンは巧みに歌っている。特に後者などはこの時期以降顕著になる彼のブルージーな側面を上手く活かしているように思う。さらに「Headless Cross」などでは、ギーザー・バトラーのベースを明瞭なサウンドで楽しめるのも嬉しい。
CD
01. Time Machine
02. Children Of The Grave
03. I Witness
04. Into The Void
05. Black Sabbath
06. Psychophobia
07. The Wizard
08. Cross Of Thorns
09. Symptom Of The Universe
10. Headless Cross
11. Paranoid
12. Iron Man
13. Sabbath Bloody Sabbath
Short Version DVD
01. Time Machine
02. Children Of The Grave
03. I Witness
04. The Mob Rules
05. Into The Void
06. Anno Mundi
07. Symptom Of The Universe
08. Headless Cross
09. Paranoid
Long Version DVD / VHS
01. Time Machine
02. Children Of The Grave
03. I Witness
04. The Mob Rules
05. Into The Void
06. Anno Mundi
07. Black Sabbath
08. Neon Knights
09. Psychophobia
10. The Wizard
11. Cross Of Thorns
12. Symptom Of The Universe
13. Headless Cross
14. Paranoid
15. Iron Man
16. Sabbath Bloody Sabbath





1995
FORBIDDEN / フォービドゥン

 マーティンSABBATH最後の作品。前作ツアー終了後、ギーザーが
マーティンと折り合いを欠いて脱退したため、アイオミはコージー
とニールを呼び戻し「TYR」時のメンバーでバンドの再編成を果た
した(この時は"再結成"とは言われなかった)。


 本作で批判の材料にされるのが、外部ミュージシャンの参加とプ
ロデュースである。当時の流行を意識したような音作りはメンバー
を困惑させた。マーティンも'70年代サバス・ナンバーのように、
リフをなぞるような歌を聴かせる場面が多い。そのため作品により
ギターリフ主導の、ヘヴィなイメージを漂わせている。

 一つ一つの曲は良い。クールなリフの「Get A Grip」に、明るく
キャッチーな曲想の「Rusty Angels」,メロディアスな「I Won't
Cry For You」や「Kiss Of Death」も印象的だ。リフ・マスターと
してのアイオミは何も変わっていないし、コージーのドラムは相変
わらず劇的。マーティンの声も(アルバムで聴く限りは)衰えてな
どいない。

 しかしアルバムのセールスは低迷し、ツアー後バンドは解体。ア
イオミも本作を失敗だと認識しているようだ。
Released: 8 June 1995
Recorded: 1994 - 1995 Parr Street Studios, Liverpool and Devonshire Studios, Los Angeles
Producer: Ernie C
01. The Illusion Of Power
中盤でICE-Tがラップ調の早口ヴォーカルを入れている。
02. Get A Grip
主にコージー在籍中の演奏。曲中でマーティンと観客の掛け合いがあった。
03. Can't Get Close Enough
'95年ツアーを通じて演奏された。
04. Shaking Off The Chains

05. I Won't Cry For You
'95年のツアー序盤、スウェーデンのフェスでのみ演奏された。
06. Guilty As Sin

07. Sick And Tired

08. Rusty Angels
'95年のツアーを通じて演奏。
09. Forbidden

10. Kiss Of Death
コージー脱退後、「Get A Grip」に代わって取り上げられた。
11. Loser Get It All
日本盤ボーナストラック