1983年
BORN AGAIN





1983
BORN AGAIN / 悪魔の落とし子

 バンド史上でも特異といわれるギラン時代。その唯一の作品は、
サバスの全作品中でも指折りにヘヴィな作品となった。


 イアン・ギランの加入によってDEEP PURPLE化・GILLAN化が懸念
され、発表当初から問題作のレッテルを貼られているが、楽曲面は
充実していた。バッキングでは、アイオミが前作以上にSABBATHら
しいヘヴィネスを表現したことで、歴代の各作品と比較しても「重
さ」と「金属性」を備え、どこから聴いても"SABBATHの音"であっ
た。そこへロックンロールを背景に持つギランが自由に歌った事
で、重量感のバッキングと素軽さのヴォーカルという、相反する要
素の両立を実現した。

 音楽でメンバー同士のコラボレーションが結実することを化学反
応と言うが、この面子で得られたエネルギーはそんな生易しい物で
はない。「Trashed」,「Disterbing The Priest」,「Digital
Bitch」といった楽曲が、融和ではなく対決(もちろん良い意味
で)の中から生まれたこのアルバムの性格をよく物語っているとい
えよう。
Released: 7 August 1983
Recorded: 1983 at The Manor Studio, Shipton on Cherwell, Oxfordshire, England
Producer: Black Sabbath, Robin Black
1. Trashed ライヴでは演奏されなかったが、ビデオクリップが製作された。
2. Stonehenge ショウのオープニングや曲の冒頭として使われた。
3. Disturbing The Priest 本作を代表する楽曲。ギラン在籍時のみ演奏。
4. The Dark ライヴでも「Zero The Hero」のイントロとして使用。
5. Zero The Hero 「BORN AGAIN」ライヴのハイライト。'86年ツアーでも曲冒頭を演奏。
6. Digital Bitch 主にライヴ後半で演奏。演奏されない日もあった。
7. Born Again ヨーロッパツアーまでの演奏。米国ツアーではセットから外れた。
8. Hot Line
ライヴでは常に二曲目で、ギランの力強い歌が聴かれた。
9. Keep It Warm
レディング フェスの辺りまで、ほんの数回演奏されたきり。



2011
BORN AGAIN Deluxe Edition (2CD)
 リリースが待たれていた2枚組デラックスエディション。

 ボーナス1曲目の「The Fallen」は、ブートで登場した際にデモ音源でファンを驚かせた楽曲。ここではピッチ下げのテイクが収録された。続く「Stonehenge」は、7インチシングル「THRASHED」のB面に収録されていたロングバージョンのインスト。

 それ以降の「Hot Line」から「Paranoid」までの9曲は、'83年8月27日のイギリス"レディング・フェスティバル"における、BBCの放送用音源からのテイク。
 このライヴは(AUDで聴ける「Digital Bitch」はけっこう散々だったが)ギランのテンションが非常に高く、'83年でも上位といえる白熱した演奏を聴けた。特に「Paranoid」でのステージと客席の一体感、熱狂的な盛り上がりは素晴らしく、ギランSABBATHの魅力を味わえる。さらに「Smoke On The Water」のSABBATHバージョンが公式化された意義は大きい(しかし「Black Sabbath」中盤では原盤に由来すると思われる音飛びが見られる)。
Disc 1 (Original Album)
01. Trashed
02. Stonehenge
03. Disturbing The Priest
04. The Dark
05. Zero The Hero
06. Digital Bitch
07. Born Again
08. Hot Line
09. Keep It Warm
Disc 2 (Bonus Tracks)
01. The Fallen (Album Session Outtake)
02. Stonehenge (Extended Version)

(Live - August, 27th, 1983)
03. Hot Line
04. War Pigs
05. Black Sabbath
06. The Dark
07. Zero The Hero
08. Digital Bitch
09. Iron Man
10. Smoke On The Water
11. Paranoid



1983
BORN AGAIN (Demo Version)

BORN AGAIN UNMIXED DEMOS
& The Fallen(2004)

THE MANOR TAPES
BORN AGAIN UNMIXED DEMOS / 2CD (2009)
 「BORN AGAIN」は、アイオミやギランが常々「手元のデモのほうが音が良い」と証言し、さらにアルバム未収録の
楽曲が存在する事も以前から知られていた。しかしそのデモや未発表曲がどんな内容かは知られていなかった。

 2004年夏に登場した「BORN AGAIN UNMIXED DEMOS & The Falles」は、それら内容を明らかにした衝撃のデモ。
 エフェクトの類はほとんどかかっておらず、剥き出しの生々しい音がスタジオライヴのような凄みで迫ってくる。
ほぼ全編で完成形であるオリジナル版よりもピッチが半音ほど早く、ギランのヴォーカルはその分カン高く聞こえ
る。ピッチ調整のミスでスピードが早いと言われる事もあるが、音はむしろ自然な印象だ。

 「THE MANOR TAPES」は'09年になって登場した新装盤。テープ直コピーとリマスターの2CD仕様。既発盤では半音
早かったピッチが公式と同じになり、完成版と似た感触になっている。素材的には「BORN AGAIN UNMIXED DEMOS」の
テープ・ゼネレーション違いのように感じるが、マスターについての詳細については不明である。


 走り気味のバッキングに吼えるスクリーム、という得意なスタイルで自由に歌うギランの圧倒的な存在感は、楽曲
に「イアン ギランのソロへアイオミ・バトラーが参加」という印象を与えている。アイオミのギターも全編で弾き
まくっているという印象。黙々とリフを積み重ね、コードを紡いでいた今までとはうって変わって、金属的なエッジ
のギターが、全曲インストと言わんばかりに展開されている。本作のレコーディングはアイオミらとギランが顔をあ
わせず、バッキング完成後にギランが歌を載せるという完全分業方式が採られたが、その作業方式がストレートに音
へ現れた、と言える。
1. Hot Line
ピッチが早い分ライヴのノリで、1曲目でも違和感が無い。完成版とはギター
フレーズが一部で異なる。
2. Keep It Warm
完成版と較べてギランのヴォーカルが目立つ。中盤のギターソロとキーボー
ドも格好よく聴こえる。
3. The Fallen
完成版未収録ナンバー。リバーブ気味に重ねられたハーモニーや、サビで吠
え立てるスクリームはGILLANナンバーという色合い。
4. Digital Bitch
駆け抜けるような疾走感、金属感剥き出しのギターが強烈。完成版で聴けた
くらいの重低音が効いていれば、なお良かった。
5. Stonehenge
シングル収録テイクとほぼ同じ。幻想的でスペーシーなキーボードが4分を越
えて展開されている。完成版の"心拍音"は入っていない。
6. Trashed
ギターソロ以降は歌が入っておらず、曲の尺も40秒ほど短い。しかしギタ
ー・フレーズが印象的で、インストとして聴いても面白い。
7. Zero The Hero
導入にあった「The Dark」は未収録。コーラスの部分で歌詞やメロディが一
部異なる。また後半は歌が入っておらず、インスト状態である。
8. Born Again
イントロでは完成版で聴けないドラムが入る。ただでさえ半音早い演奏をよ
り早く感じさせ、完成版と較べて違和感が伴う。
9. Disturbing The Priest
アレンジ面は完成版とほぼ同じ。「Stonehenge」の位置にあたる場所には、
不協和音気味のイントロが付属している。